災害時に約189万戸の賃貸住宅を無償貸与 競合する大和ハウスと大東建託が災害支援協定を結んだ意義:産業動向(3/3 ページ)
大和ハウス工業と大東建託の両グループ企業は、互いに保有している賃貸物件の情報を共有し、災害時に連携して支援にあたる協定を締結した。両社グループが管理する計約189万戸の賃貸住宅を生かし、被災した賃貸住宅のオーナーと入居者に無償で貸し出す他、備蓄品の提供、復旧用資材の配給など、さまざまな角度から支援していく。さらに平時でも、防災に関する講習会を全国各地で随時開催するなど手を携える。
競合他社も巻き込んださらなる協業拡大も模索
平時の取り組みでは、賃貸住宅の入居者やオーナー、地域住民を対象とした防災に関するイベントを定期開催。AEDの扱い方セミナーやVRを用いた水災/火災体験、消火訓練、簡易食器のつくり方講座といった防災に役立つ講習会を共同で実施する。2024年7月6〜7日に第1回となる防災イベントを神奈川県横浜市の「横浜市民防災センター」で、賃貸住宅入居者やオーナー、地域住民を対象に開き、そのあとの9月には中部エリア、11月には関西エリアでも企画している。
競合にあたる両社グループが協業する意義について、大和ハウス工業 代表取締役社長 芳井敬一氏は、「業務上では切磋琢磨し合っている競合企業と言えるが、災害時には関係ない。困っている入居者をいかに早く救出できるかの視点で見た際、協力し合った方が良いと判断した」と説明。
大東建託 代表取締役 社長執行役員 竹内啓氏も、「賃貸物件は最低限な生活を被災者に提供できる大切なインフラの一つ。大切な命を守るために無駄なく活用してほしいとの芳井社長の言葉に感銘を受け、協業を提案されたその場で即決した」と同意する。いずれは全不動産会社が協力するような関係を構築できるように、まずは2グループ間での連携を高めていきたいと、互いにうなずいた。
今後は、競合他社のみならず、地方自治体とも協議を進め、有事の際に行政と連携できる体制を整備し、さらに地域の安全安心の確保に努める活動も進めていく。
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