「i-Construction2.0」を国交省が発表、2040年に建設現場の生産性1.5倍へ:スマートコンストラクション(2/2 ページ)
国土交通省は、建設現場での施工の自動化や省人化技術の導入に向けた対策をまとめた「i-Construction2.0」を公表した。オートメーション化の推進により、2040年度までに建設現場で3割の省人化を実現し、生産性を1.5倍に引き上げることを目標に掲げた。
ICTによる施工支援から自動化施工へ転換 3つの柱で推進
国交省は2016年度から、ICTの活用などにより建設生産プロセス全体の生産性向上を図る「i-Construction」を推進してきた。これまでのi-Constructionでは、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目標に掲げていた。直轄事業では既に、ICT施工による作業時間の短縮効果による生産性向上比率が、2022年度に21%(2015年度比)となるなど、想定を上回る成果が挙げられている。
しかし今後、災害の激甚化/頻発化やインフラ老朽化を背景に、社会資本の整備/維持管理に関するニーズは増加することが見込まれる一方で、2024年度には生産年齢人口が約2割減少することが予測されている。そこで、国交省はi-Constructionの取り組みをさらに進化させ、建設現場の省人化対策を強化することとした。
i-Construction2.0で掲げる3つの柱のうち、施工のオートメーション化ではまず、建設機械のデータ共有基盤の整備や安全ルールの策定など、自動施工の環境整備に取り組む。これに加え、遠隔施工の普及拡大やAIの活用などにより施工の自動化を推進する。
施工を自動化することで、1人のオペレーターが遠隔で複数の建設機械を操作できるようになり、危険な現場でも人的被害が生じるリスクを低減すると同時に、生産性の向上にも貢献する。今後5年程度の短期的には現場取得データをリアルタイムに活用する施工の実現を、10年をめどとする中期的には大規模土工などの一定の工種/条件下での自動施工の標準化を目指す。また、11年以上先の長期目標として、大規模現場での自動施工、最適施工を実現することを掲げた。
データ連携のオートメーション化では、BIM/CIMデータの製造・施工などの工程への活用を見据えた設計環境や属性情報の標準化と、発注者も含むデータ共有基盤の整備に取り組む。他にも、現場データ活用によるペーパーレス化や施工の管理/監理を高度化するアプリ開発に加え、将来は設計自動化技術の研究にも着手する。
施工管理のオートメーション化では、リモートでの施工管理や監督検査により省人化を推進するとともに、有用な新技術などを導入して現場作業の効率化を推進する。また、プレキャスト部材の積極活用し、インフラ構造物のモジュール化建設を目指す。
国交省はi-Construction 2.0の2024年度の取り組みとして、施工現場での遠隔施工の試行や、自動施工の安全ルールを実現場に適用する試行工事などを実施する。また、異なるメーカーの建設機械でもユーザーが同じプログラムで動作させることが可能な基盤整備、大容量データを円滑に利用できる環境整備などについても、産学官が連携して推進する。
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