BEMSの基礎:基礎から学ぶBEMS活用(1)(1/2 ページ)
ビルの効率的な省エネ施策に欠かせないIT/IoT活用。本連載ではBEMSを筆頭に、あらためてその仕組みや導入のポイントなどを解説していく。第1回はBEMSの位置付けや導入のメリットなど、BEMSの基礎について解説する。
ICTを活用し、対象領域のエネルギーを効率よく管理・運用する「EMS(Energy Management System)」。昨今の地球温暖化防止、省エネルギー、節電といったエネルギーの消費量を管理、分析するシステムとして、多くの領域で活用されており、その用途に応じてさまざまな種類のEMSがあります。代表的なEMSは以下の通りです。
- BEMS(ベムス): Building Energy Management System (一般ビル、商業ビルなどのエネルギー管理システム)
- FEMS(フェムス):Factory Energy Management System(工場のエネルギー管理システム)
- HEMS(ヘムス):Home Energy Management System(家庭のエネルギー管理システム)
- CEMS(セムス):Community/City Energy Management System(地域のエネルギー管理システム)
FEMSは工場内の電力を始めとしたユーティリティの使用状況から生産設備と生産量の原単位比較をするなど、年間のエネルギーコストを管理し、予算化することを目的としています。HEMSは、家庭でのエネルギー使用量をグラフ化し、太陽光発電システムなど再生可能エネルギーによる発電量を表示するなど、省エネをより身近に感じさせるものとなっています。より大きな領域を対象とするCEMSでは、地域内にある太陽光発電や風力発電設備の発電量の表示や全体のエネルギー消費量を管理することで、街全体の省エネを図ることを目的としています。
こうしたさまざまなEMSの中で、オフィスビル、商業施設、学校、病院など多くの建物に導入されているのがBEMSです。これは「Building Energy Management System」のそれぞれの頭文字を使った略語で “ベムス”と呼ばれています。本稿はこのBEMSの役割と機能について解説していきます。
BASとBEMSの違い
一般のオフィスビルでは、「BAS(中央監視・自動制御システム:Building Automation System)」を利用し、冷房や、暖房、換気などの空調や照明の点灯スケジュールが、あらかじめ設定された室内環境になるよう自動制御されています。BASは監視システムで、各居室に設置された計測器からの室内温度や、設備の故障などを示す警報など、ビルの設備に関する情報を収集し、監視・制御することが主な役割です。一方BEMSは、エネルギー(Energy)という言葉が示すとおり、ビルで使用されるエネルギーを管理することを目的とするシステムです。
日本では1970年代の2度にわたる石油危機を経て、省エネルギー法が制定され、産業・輸送分野における省エネへの取り組みが進みました。1980年代後半からは、地球温暖化防止は全世界で取り組むべき課題として認識され始め、1997年には京都議定書が採択されるなど、地球全体での温暖化防止策が進められています。エネルギーの40%はビルで消費されているというデータもあることから、ビルのエネルギー管理の重要性が増し、ビル管理システムのBASから、さらに一歩先に進んだBEMSの導入が進んでいるという背景があります。
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