ドローン第一人者の野波健蔵氏が創業した「Autonomy」の国産機体はどこが違う?ワイヤレス給電で24時間の現場監視:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023(2/2 ページ)
Autonomyは、日本でのドローン開発の第一人者として知られる千葉大学 名誉教授 野波健蔵氏が2022年1月に創業した会社。日本のドローンに関する研究開発と社会実装で世界の優位に立つことを目標に定め、オープンソースを使わない完全オリジナルのスタンスで優れた機体とソリューションを生み出している。
大型の給電設備が不要で設置場所も選ばない「ワイヤレス給電」
舘氏は、ワイヤレス給電のメリットの1つとして、給電用接点がないのでスパークが起きないことを挙げる。ドローン給電には、給電側とドローン側で端子を接触させる方法もあるが、端子の接触時にスパークが発生してしまうこともある。スパークによってドローンが損傷するケースもあるが、端子のないワイヤレス式ではスパークは発生しないので、結果的に損傷リスクを防げる。
他にも、ワイヤレス式の給電は給電側の設備がシンプルで済む利点もある。大型の給電設備が不要で設置場所も選ばず、人によるバッテリーの交換作業も必要ない。舘氏は、「Autonomyが得意とする自律飛行技術とワイヤレス給電を組み合わせることで、運用時は最小限の人員に抑えられる」と、利点をアピールした。
他の機体としては、有線ケーブルで給電し、24時間の連続飛行する「Surveyor-III」、最大60キロの積載に対応する大型ヘキサコプターの「Surveyor-X」にも触れた。
オートパイロット飛行とAI点検で、2週間の作業時間が3時間で完了
Autonomyは、ドローンと関連する各種のソリューションも提供している。紹介されたのは、テレメトリー通信用のデジタル無線機、リモートID、ナイトビジョン、高性能カメラ用のジンバル、復興庁と開発している原子力発電所用などのガンマ線を計測する電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)などだ。
このうち、テレメトリー通信用のデジタル簡易無線機は、横浜と千葉間の約50キロをドローンハイウェイでつなぐ東京湾縦断飛行用に開発した。LTE通信を含む既存の無線通信が使えない区間でも、切れ目のない通信を実現し、オートパイロットによるドローンの運行が可能になる。
リモートIDは、Autonomyが独自開発し、安価なのがセールスポイントだ。2022年6月に100グラム以上のドローンに義務付けられたリモートIDだが、1台あたり2〜3万円のコストがかかる。AutonomyのリモートIDは、この状況を変えるツールになりそうだ。
紹介されたソリューションの中で特に建設系で役に立ちそうなものは、富士フイルムの高解像度カメラ「GFX100S」をSurveyorシリーズに搭載するためのジンバルだろう。
GFX100Sは、1億200万画素の有効画素数を持ち、精細な撮影ができるカメラ。広角での撮影でも、ゆがみを抑えた画像が得られる性能も持ち合わせている。1億画素を超えるGFX100sの性能があると、0.04ミリのクラックも5メートル離れた地点から撮影した画像で確認できるという。
舘氏は、Surveyorのオートパイロット飛行とAI点検ソリューションによって、「これまで2週間ほどかかっていた解析も3時間ほどで完了する」と説明する。ちなみに、レポート作成や現場サポートのサービスも含まれている。
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