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情報学の視点から建築を再構成する「建築情報学」の新しい地平 次世代設計者を育成するアカデミズム最前線Archi Future 2023(1/3 ページ)

建築情報学とは、情報技術の発達と浸透による根源的な影響を踏まえ、「建築」という概念を情報学的視点から再構成することを目指す新たな建築領域の学問。コロナ禍の2021年度に学会を設立し、次世代の設計者を育成する「そだてる」、学術論文の査読と公表などの「ふかめる」、学会内外との交流を図る「つなげる」の3本柱で展開している。

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 東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 特任教授 池田靖史氏と、広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科 准教授 杉田宗氏は、「Archi Future 2023」(会期:2023年10月26日、東京・有明TFTホール)のセミナーA会場オープニングセミナーに登壇。「建築情報学会ハイライト〜アカデミズム最前線」と題した講演で、建築情報学会を紹介した。

 建築情報学会は2020年11月に、情報技術の発達と浸透による影響を踏まえながら、情報学的視点から「建築」という概念を再構成するために設立。池田氏は学会の会長、杉田氏は常任理事をそれぞれ務める。

 活動は、大きく「そだてる(育成活動)」「ふかめる(学術活動)」「つなげる(交流活動)」の3つに分類。今回は、2022〜2023年にかけての活動を約3分間の動画で紹介した後、池田氏と杉田氏がコメントする形式で進めた。

建築情報学の次世代を担う人材をどうやって育成しているか?

建築家/東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 特任教授 池田靖史氏
建築家/東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 特任教授 池田靖史氏 写真は全て筆者撮影

 そだてる活動として初めに紹介されたのは、育成活動委員会の「Fes(フェス)」。2022年に始まった短期集中型オンラインワークショップで、杉田氏が委員長を務める。建築を含め、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まり、コラボレーションして、ビジョンメイキングから具現化までを目指す活動で、社会人と学生の接点の創出、建築情報教育の新しい土台の創造という目的もある。

 ワークショップは、社会人を対象にした「THINKING」と、学生を対象にした「CODING+MAKING」の2部構成。社会人が与えられた課題(2023年は「集合住宅」)に対し、アイデアを出して学生に説明。学生はアイデアを具現化するための5つのステップを考え、10分間のプレゼンテーションにまとめる。ワークショップの期間は1週間で、オンラインが基本だが、2023年は最初のTHINKINGと、CODING+MAKINGのプレゼンテーションで、参加者が対面で会える場を設けた。

 池田氏は、「建築情報学会が考える、新しいデジタル技術を活用したデザイン教育法を模索するもの」と評価した。

ワークショップで参加者の情報共有に活用したオンラインホワイトボード「Miro」。参加者が書き込んだアイデアやコメントが時系列に記録されるため、成果物ができるまでのアーカイブにもなる
ワークショップで参加者の情報共有に活用したオンラインホワイトボード「Miro」。参加者が書き込んだアイデアやコメントが時系列に記録されるため、成果物ができるまでのアーカイブにもなる
広島で開催されたプレゼン。杉田氏は、オンライン開催で「全国の建築情報に興味を持つ学生たちをつなげる役割を果たせる」と話す
広島で開催されたプレゼン。杉田氏は、オンライン開催で「全国の建築情報に興味を持つ学生たちをつなげる役割を果たせる」と話す

 「そだてる」活動としてもう一つ取り上げたのが、同じく育成活動委員会の「Challenge 2022」だ。

 Challengeは、日々発展する社会や技術に対する継続的な学びのモチベーション維持/向上するための取り組みで、2022年のテーマは“画像生成AI”。開催期間(2022年11月10日〜12月8日)中に、コンテンツ生成型AIを使って集合住宅をデザインし、ハッシュタグ「#AISCjallenge2022」を付け、インタグラムに投稿するだけで、誰でも参加できるという建付けで開催した。

 今回は学習支援として、コンテンツ生成型AIの簡易レクチャーや海外建築家による最新のコンテンツ生成AIの作品を紹介する「Kick-off」、画像や画像から考えるデザインについてレクチャーする「Talk」、投稿作品などについてレビューとディスカッションをする「Final Review」の3つのオンラインコンテンツも用意した。

Challenge 2022での学習支援。全てYouTubeでライブ配信し、アーカイブも無料公開
Challenge 2022での学習支援。全てYouTubeでライブ配信し、アーカイブも無料公開
Challenge 2022学会グッズ贈与作品の一つ。冷たい印象になりがちなAIの作品に、人が住んでいるような気配が感じられたことが選定の要因となった
Challenge 2022学会グッズ贈与作品の一つ。冷たい印象になりがちなAIの作品に、人が住んでいるような気配が感じられたことが選定の要因となった

 池田氏は、「普通の大学ではAIで設計する機会は限られるため、Challenge 2022で生成型AIを取り上げたことは、建築情報学会の特性を生かしたチャレンジ」と語った。

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