港湾工事でICT活用、大型リクレーマ船の施工状況を4Dで可視化:施工
東洋建設は、港湾工事におけるICT活用の一環として、大型リクレーマ船の施工状況を4Dで可視化するシステムを開発した。従来作業員が行っていた計測作業を自動化し、作業の初期段階から土砂を均等に投入できる。
東洋建設は2024年3月8日、港湾工事のICT活用の一環として、保有する大型リクレーマ船「第二東揚(とうよう)号」の施工状況を4次元で可視化する「TORe-4D(トーレフォーディー)」を開発したと発表した。土砂投入中の水中地形を可視化し、計測作業を自動化する。
揚土位置と土量をもとに堆積形状を算出 揚土状況を4次元で可視化
リクレーマ船は海面の埋め立て工事などで、土運船によって運ばれてきた土砂をベルトコンベヤーで埋立地に排出する揚土作業を担う。水中に土砂を投入すると、水が濁り堆積状況の把握が困難になるため、これまでの投入管理では、作業員がレッドと呼ばれる重錘(じゅうすい)を使用して水深を確認していた。
新開発のTORe-4Dは、船体とスプレッダー先端部に高精度のRTK-GNSSを搭載し、揚土位置を正確に計測する。また、ベルトコンベヤーにレーザー計測装置とスピードモニターを設置し、土量を管理する。
現場で計測した揚土位置や土量の情報と、事前に現場試験で計測した含水比やスランプ(土砂/生コンなどの軟らかさの程度を表す指標)などの土質条件をシステムに反映させることで、揚土時の単位時間当たりの堆積形状を算出。さらに、気中部/水中部の投入状況などの施工情報を複合的に組み合わせて、揚土状況を4次元で可視化する。
TORe-4Dの導入により、埋め立て作業の初期段階から土砂を均等に投入できる他、外郭施設に与える偏土圧を軽減し、施工の安全性向上や作業員による計測作業の自動化にもつながる。
今後はさまざまな現場に導入するとともに、モデル精度の向上やシステム更新を進めていく。
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