日本一のアーチ橋「広島空港大橋」を自律飛行型と狭小空間専用のドローンで点検 パーソルP&Tと長大:ドローン
パーソルプロセス&テクノロジーと長大は、日本最大のアーチ橋として知られる「広島空港大橋」で、自律飛行型と狭小空間専用の2種類のドローンを用いて、非GPS環境下や狭いスペースの支柱内外を点検した。
総合人材サービスパーソルグループのパーソルプロセス&テクノロジー(パーソルP&T)は2023年12月14日、人・夢・技術グループの長大と共同で、三原市本郷町の沼田川渓谷に架かる「広島空港大橋」で、ドローン搭載カメラで撮影した画像をもとに、支柱内外の変状箇所を検知する点検方法を検証したと公表した。
橋梁支柱の変状を検知し、省力化と高所作業リスクを低減
共同実証は、長大が広島県から受託した「広島空港大橋定期点検」の中で、「鋼材を対象にドローンを利用した画像診断による点検方法の検証」として実施した。各社の分担は、長大が実験計画と点検結果判定、パーソルP&Tがドローン点検計画やドローンオペレーションを担った。
点検対象の広島空港大橋は、アーチ支間長380メートル、橋長800メートルにも及ぶ、現時点で日本一大きいアーチ橋で、従来の定期点検ではロープアクセスやはしごの昇降で、支柱を直接目視して変状箇所を見つけ出していた。しかし、高所、狭所、暗所などで危険を伴う作業のため、リスクを低減する新たな点検方法を模索していた。
今回は、ドローン2種類を導入して、橋梁(きょうりょう)の支柱内外で「腐食(錆)」「防食機能の劣化」「漏水/滞水」など、変状箇所を検知し、従来の直接目視と同等の品質で健全性を診断できるか、省力化や高所作業のリスク低減についても、今後の実用化を見据えて評価した。
点検で支柱の外側は、カメラで取得した映像をもとに自己位置推定と環境地図作成を同時に行う「visual SLAM」の技術を用い、AIによる自律飛行で撮影。画像解析で、鋼材表面の変状箇所(腐食や防食機能の劣化)と、腐食範囲を検知した。
ドローン点検で検知した鋼材表面の変状箇所
支柱の内側は、「狭所」「暗所」「支柱の傾き」「突起物による障害」「非GPS環境」「電波障害」といったドローン飛行上の懸念事項が多数あったものの、狭小空間専用ドローンで死角のない撮影に成功。照度不足で、腐食などの損傷判別が困難などの新たな課題も挙がったが、一定の有用性を確認した。
今後は、撮影データから生成する3D点群モデルの活用で、さらなる効率化にも取り組む。また、定期点検だけでなく、現地踏査や発災後の緊急点検時にもドローンの活用を検討している。
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