3DプリンタでPCa構造物を大林組が製作 全長42m潜水突堤の先端に適用:3Dプリンティング
大林組は、3Dプリンタで製作したプレキャスト部材を、砂浜の侵食を守る岩盤型潜水突堤の一部に適用した。同社によれば、全長50メートル規模の大型構造物への3Dプリンタ製作部材の適用は国内初だという。
大林組は、神奈川県中郡大磯町で施工中の「R3西湘海岸岩盤型潜水突堤整備工事」で、新たに設置する潜水突堤の一部に、3Dプリンタで製作したプレキャスト(PCa)部材を適用したと2023年11月17日に公表した。
PCaブロックの重さを約50%削減し、安全性と施工品質を向上
神奈川県西部に位置する西湘海岸は、台風の影響で砂浜が大きく侵食し、護岸や擁壁の倒壊による近隣住宅地への影響が懸念されている。そのため、海岸保全施設整備事業として、安定的な砂浜の維持を目的とする潜水突堤を整備している。
潜水突堤は、16(幅)×3〜7(高さ)×42(奥行き)メートルに及ぶ大型構造物で、先端摺付部は3次元的に滑らかに変化する形状となっている。既存の工法では、多数のPCaパネルを必要とし、最大35.5トンの超重量物となるため、施工の安全性や品質管理の面で課題があった。
そこで、建設用3Dプリンタで外殻をつくり、大林組の保有技術である常温硬化型のモルタル材料「スリムクリート」を内部に充填(てん)する独自工法で、PCaブロックを製作した。1ブロックの最大重量は17.6トンに減り、重さが約半分となることで、各ブロックの揚重は4点吊(つ)りが可能となった。既存工法と比較して安全性と施工品質の向上を実現し、隣接ブロックとの衝突による損傷リスクも低減した。
また、既存工法では、工場で製作したPCaパネルを搬入するが、パーツが多く、搬入や荷下ろしに時間を要し、海中への据え付け前に組み立て作業が必要となる。組み立て作業は天候に左右されるため、悪天候時には作業中断してしまう。
今回は、大型PCaブロックの搬入や荷下ろし、組み立て作業を簡素化して、従来工法と比較すると、先端部ブロックの据え付けにかかる工期を15日から6日に短縮した。その結果、作業人数も延べ96人から42人へ削減され、工期短縮と省人化の両立が実現した。
R3西湘海岸岩盤型潜水突堤整備工事は、国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所の発注で、施工場所は神奈川県中郡大磯町国府新宿地先。工期は2021年10月15日〜2024年3月29日。
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