ソフトバンクと日建設計が次世代スマートビルの新会社設立 データを食べて進化する“オートノマスビル”:次世代のスマートビル(3/3 ページ)
情報処理推進機構(IPA)のデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)で、スマートビルの定義やシステムアーキテクチャ、運用プロセスなどを示す「ガイドライン」が2023年4月に公開され、海外に遅れること国内でもスマートビル化の流れは着実に進展しつつある。そうしたなかでソフトバンクが日建設計をパートナーとし、建物の統合基盤“ビルOS”を核に、次世代のスマートビル構築を設計段階から支援する合弁会社を設立した。将来は、海外へOSやアプリを含むパッケージ販売も視野に入れている。
オートノマスビルの海外販売も視野に
両社協業の背景について、ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員兼CEO 宮川潤一氏は、汐留から竹芝の東急不動産が開発した「東京ポートシティ竹芝」へ本社移転した際に試みたビルOSでの実証に触れた。
竹芝本社では、エレベーターや空調、照明、防犯カメラのビル設備データと、店舗やエレベーターホール、屋内外環境のIoTセンサーで取得したデータを5Gを介してビルOSに集めた。その結果、顔認証の入退場やロボットの清掃/警備、ビル内利用状況のサイネージ配信などが実装されたが、ビル設備は個々が独自仕様で、IoTの機器やケーブルもバラバラの設置だったため、双方のデータを集めても個別最適化だけにとどまった。宮川氏は、「不動産デベロッパーとだけでは実現しなかった部分の相互連携には、設備のプロトコル共通化などビルOSの運用を早期から見据えた設計段階での反映が不可欠だと分かり、そのために設計事務所の力が必要だった」とし、事業規模や建築士の数を鑑みて日建設計に白羽の矢を立てた。
オートノマスビルのビジョンでは、「従来のスマートビルから1段階レイヤーを上げ、ビル自身が掃除ロボットを派遣して、自動で清掃することが具現化するようなビルとなる。ビル内に点在している多様なデータをビルが食べて進化し、昨年よりも今日できることが多くなり、建物の資産価値が上がるまでつなげたい。ゆくゆくは海外にオートノマスビルをパッケージとして販売展開していくことや行政が主導となって立ち上げるべきシティーOSで、点になっているビルが集合体化して、本当の意味でのスマートシティーが達成することも視野に入れたい」と意欲をのぞかせた。
SynapSparkの沼田氏は今後の活動について、「OS上で動かすアプリは、ビルオーナーなどの要望をヒアリングしながら、マルチテナントでも顧客に合わせたアプリを組み合わせ、2024年から提供を開始する予定だ。会社全体での売上目標は、新築または既存、規模の大小を問わず、建物や都市の結節点を担い、スマートビル普及を加速させて、10年後に100億円としたい」と事業展望を明らかにした。
「SynapSpark」会社概要
社名:SynapSpark株式会社(英文社名:SynapSpark Ltd)
所在地:東京都港区海岸1-7-1
代表者:代表取締役社長 沼田周
設立予定日:2023年12月1日
資本金:4億円(うち資本準備金2億円)
出資比率:ソフトバンク51%、日建設計49%
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