ソフトバンクと日建設計が次世代スマートビルの新会社設立 データを食べて進化する“オートノマスビル”:次世代のスマートビル(2/3 ページ)
情報処理推進機構(IPA)のデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)で、スマートビルの定義やシステムアーキテクチャ、運用プロセスなどを示す「ガイドライン」が2023年4月に公開され、海外に遅れること国内でもスマートビル化の流れは着実に進展しつつある。そうしたなかでソフトバンクが日建設計をパートナーとし、建物の統合基盤“ビルOS”を核に、次世代のスマートビル構築を設計段階から支援する合弁会社を設立した。将来は、海外へOSやアプリを含むパッケージ販売も視野に入れている。
「渋谷ソラスタ」と「渋谷フクラス」でオートノマスビル化を計画
オートノマスビルの事例としては既に、2024年5月に完成する赤坂グリーンクロスで、ソフトバンクと日建設計に加え、積水ハウス、日本生命とともに、オートノマスビル実現に設計段階からチャレンジ。成果としては、設備のプロトコル標準化やサイバーセキュリティを高めたネットワーク整備などにより、LANケーブル50%減、消費電力15%削減、ビル運営工数30%削減が見込まれている。
新会社の設立に先立ち、都内で開催された会見で、SynapSparkの代表取締役社長に就任するソフトバンク出身の沼田周(あまね)氏は、進行中の赤坂グリーンクロスを第一弾に、次の展開で「渋谷ソラスタ」や「渋谷フクラス」のコンサルが既に決まっているとし、「ビルメンテナンスの効率化をはじめ、防災や警備の強化で設計支援していく」と説明した。
日建設計 代表取締役社長 社長執行役員 大松敦氏は、「脱炭素はもはや世界的な共通課題。日本のCO2排出量で当社の設計プロジェクトは約1.2%を占める」と話す。
これまでにも日建設計は、岐阜県の瑞浪市立瑞浪中でエコモニターを設置し、学生にも分かるようにエネルギー消費を可視化して脱炭素の意識付けを行ったり、オフィス内のCO2排出量削減に貢献するとポイントが付与されるスマートフォンアプリ「Asapp」を展開したりするなど、脱炭素化に注力してきた。
大松氏は、「今後もスマートビル市場は拡大していくことが確実視されるが、現実にはビル設備はそれぞれで制御しているため、スマートビルで必要な相互連携や統合管理は難しい。設備とアプリをクラウド上でつなぐ、ビルOSを導入することで、Asappのようなサービスアプリや省エネの可視化が可能になり、脱炭素に向けた人々の行動変容も加速するはず」と期待を寄せる。
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