DJI JAPANの事例発表会にみるドローン活用の最前線―豊橋市の「レッドゴブリンズ」の事例など:ドローン(3/3 ページ)
ドローンが急激に普及する中、2022年は100グラム以上の機体登が義務化されるなど、とりまく環境にも大きな動きがあった。また、搭載するカメラやスキャナーの性能も向上し、ドローンの用途にも進化が起きている。
災害時の復旧に、ドローンの情報を活用できないか?
高橋氏は、ドローンで得た情報を被災後の復旧にも活用できないかと考えていると語る。
新しいドローンであれば、自動航行によって広範囲の画像を取得できる。画像は100〜1000枚ほどになるが、これを1枚の画像や3Dの情報にする。このようなデータは、被災後の支援や道路計画などに役立つ。ただ、情報の共有のインフラとしては、市役所のネットワークは弱く、動画をそのまま送るのは困難だ。そこで、動画そのものではなくURLを共有するなどの手法を活用し、データ加工に必要なソフトウェアに関しても試行錯誤した。
こうした取り組みは、徐々に成果へと結びついている。一例として、台風によって太平洋の沿岸に漂着した流木の処理方針を決定する際にも役立った。この事例では、ドローンを使って14キロにも及ぶ海岸線の画像を撮影し、地図上に貼り付け、翌朝に市長に提出したことで、全体方針の決定を短縮するのに貢献した。
高橋氏は、ドローンを使って得られた2次元や3次元の画像を応急/復旧期の活用の形で、罹災証明の発行を早くすることなどに役立てる挑戦を行っている。また、活用の幅をさらに広げたいと語る。
これに関しては、レッドゴブリンズの構成が有利に機能する。それは、レッドゴブリンズが市のさまざまな部署の人員で構成されているからだ。いろいろな部局にいる人員で構成されているので、市の業務全体から業務課題を集められる。ドローンが活用できるシーンは、もっと広いはずで、そのためには、連携も必要となる。
高橋氏は、「お互いにWin-Winになるような課題を得て一緒に良いものにして行きたい」との展望を述べ説明を終えた。
建設業界でも活用されるDJIのドローン
発表会では、建設業界でのドローン活用でも事例を示した。登壇者は、安田測量の代表取締役であり、全国建設産業団体連合会UAV事務局のマネジャーでもある安田晃昭氏だ。
安田氏は、建設業界でドローンの活用が進む背景を、建設の現場でICTを活用して生産性の向上を図る取り組みであるi-Constructionにからめて説明した。i-Constructionでは、現場の測量や調査など、ドローンの活用が重要になる。ドローンを使うことで、従来のトータルステーションを使った測量に比べ、広範囲を効率的に測量できる。特に3次元形状を得るには、ドローンが圧倒的に効率化につながる。
i-Constructionでは、複数の業者がコラボレーションして工事を進めるのが一般的だが、DJIが提供するソフトが有用だという。安田氏は、「DJI Terra」という撮影した写真やデータをもとに3Dモデルを再構成するSfMソフトソフトでプロジェクトファイルを出力すると、異なる業者間でもデータ共有が簡単にできるとする。
安田氏は、ドローン計測用のカメラ「Zenmuse P1」の活用についても触れた。Phantom 4 Proのカメラとの比較では、約2倍の高度で撮影できるP1の方が、撮影枚数が少なく、撮影時間も大幅に短い。高い精度は安全にも貢献し、短い撮影時間はバッテリー面でも有利となる。
ちなみに、DJI TerraはZenmuse P1に無料で付属しているとのことだ。しかも、レーザー測量のデータやマルチスペクトルカメラのデータも扱える。
安田氏は、レーザー測量としても、世界初の統合型ドローンレーザーである「Zenmuse L1」を紹介。測量にZenmuse L1を使うと、樹木が密生するような場所でも地表の状態を詳細に計測できる。
今回は、林道の工事現場に関する事例を採り上げたが、幅約200メートル、全長約1.5キロの計測が30分ほどで完了するという。安田測量では、非常に使いやすいP1とL1を重宝し、業務を効率化している。安田氏は「今後も最新の機材の性能を生かせるように技術を研鑽(けんさん)していきたい」とし締めくくった。
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