北海道電力が“火力発電所”の巡視点検で、「HoloLens 2」を活用したアプリを独自開発 技術承継の壁をDXで解消:維持管理(3/3 ページ)
北海道電力とアバナードは、火力発電所における全く新しい巡視点検業務用アプリケーションを共同開発した。アプリ開発は、北海道電力が火力発電所でのDX推進として進めてきた取り組みの1つで、国内で初めて火力発電所の巡視点検業務にMR技術を採用した。
5カ所の主要火力発電所へ展開
2022年7月には、巡視点検アプリは苫東厚真発電所での検証期間を終え、いよいよ同発電所での本格運用が始まった。既にここまでの運用で、苫東厚真発電所では効率的な技術継承や設備の異常兆候の早期検知が可能となるなど、多くの有効性が報告されていた。
巡視点検アプリが現場で有効なツールと証明されたことを受け、北海道電力では早急に各発電所への同ソリューションの普及を加速していく考えを表明している。HoloLens 2などのMRデバイスは計17台を購入し、前述の5つの主要火力発電所に配備済み。苫東厚真発電所以外の4発電所でも、実導入へ向けて順次、調整や準備が進められている。具体的には2022年度内をめどに、残る4発電所への展開を目指しているとのことだ。
今回の巡視点検アプリは、北海道電力にとって初めてのMR業務活用ということもあり、「巡視ルートを明確化」すること、そして現場で「どこをチェックポイントとする」のか、「何を確認する」のかという3点について明確化すべく運用が行われている。しかし、言うまでもなくHoloLens2には、この他にもさまざまな機能を備えたアプリケーションが用意されている。
そのため、北海道電力では、日常的な点検作業などでなどの作業指示や作業手順を現場で表示する「Guides」や遠隔作業支援の「Remote Assist」などにも活用の可能性を感じているとのことで、今後も巡視点検アプリの運用を拡大。HoloLens 2の活用ノウハウを蓄積しながら、GuidesやRemote Assistといったアプリについても、現場に適応した使い方を考えていきたいとのことである。
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