北海道電力が“火力発電所”の巡視点検で、「HoloLens 2」を活用したアプリを独自開発 技術承継の壁をDXで解消:維持管理(2/3 ページ)
北海道電力とアバナードは、火力発電所における全く新しい巡視点検業務用アプリケーションを共同開発した。アプリ開発は、北海道電力が火力発電所でのDX推進として進めてきた取り組みの1つで、国内で初めて火力発電所の巡視点検業務にMR技術を採用した。
MRを活用した新たなDXを進める上で、北海道電力が協力を仰いだのがアバナードである。アバナードは、アクセンチュアとマイクロソフトによる戦略的合弁会社として、2000年にアメリカで設立されたテクノロジーサービス企業。
北海道電力は両社支援のもと、MRソリューションとしてマイクロソフトのコードレスMRヘッドセット「Microsoft HoloLens 2(以下、HoloLens 2)」とMR開発プラットフォーム「Azure Spatial Anchors(以下、Azure)」を選択。こうした最先端のMRソリューションにより、火力発電所の巡視ルートと各チェックポイント、点検内容などを配置した独自の巡視点検業務用アプリケーションを実用化するに至った。
HoloLens 2で運用する巡視点検業務用アプリ
巡視点検の対象となる発電所設備は、複雑多岐にわたり、特にアプリ開発の舞台となった苫東厚真発電所のような石炭火力発電所は設備数が多く、巡視ルート、点検場所、点検項目もかなりのボリュームとなる。北海道電力では、現状で1日2〜3回、1回あたり約2時間をかけて巡視しているが、「重点箇所を詳しく見る」や「夜だけ見る」、巡視には多様なパターンがあり得る。
そこで北海道電力はまず、巡視点検に関わる現場の課題を抽出・分析。MRの活用方法を検討し、Azureによる開発環境も整備した。一方、アバナードはMRの運用に関するコンサルティングとアプリケーション開発を担当した他、発電所内の機器やシステムの動作確認なども担った。
その後、2021年後半には、完成した巡視点検業務用アプリの仮運用と有効性確認が苫東厚真発電所で行われた。アプリは、Azureを用いて空間認識を行うことで、HoloLens 2とクラウドサービスにより、広範囲にわたる巡視点検のナビゲーションが実現する。スタッフがMRヘッドセットを被って巡視すれば、視界に3D CGのルート案内が表示される。ルートに従って発電所内を進めば、それぞれの「現在地」に対応した「作業指示」や「参考資料」までも自動的に表示されるため、個々の内容を実行することで巡視点検を的確に行える。MR空間に表示されるデジタルコンテンツは、各発電所に合わせ自由に設定できるし、空間アンカーを移動・追加・削除してルートの変更も容易だという。
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