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「住宅ローン地獄から解放を!」セレンディクスの300万円“3Dプリンタ住宅”が示す、未来の住宅建築デジタルファブリケーション(4/4 ページ)

セレンディクスは、3Dプリンタによる住宅建築の社会実装を目指すスタートアップ企業。住宅建設コストの大部分となる人件費を3Dプリンタによる自動化で最小化し、「住宅ローンから脱却して、クルマを買い替えるように、低価格で家を買い替えるようにする」と標ぼうしている。これまでは、3Dプリンタによる家づくりは、建築基準法にどう適合させるかや耐久性のあるマテリアル(素材)をどうするかなどのハードルがあったが、セレンディクスの3Dプリンタ住宅にはそうした課題に対する解決策があるという。

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「3Dプリンタで作った家だけの“街”を作りたい」

 セレンディクスの3Dプリンタによる家作りは、日本国外の企業も含めて140社を超える企業から成るコンソーシアムによって支えられている。コンソーシアムには、建設会社やハウスメーカー、TAM製プリンタを所有する建設用3Dプリンタの出力企業はもちろん、各種のサービスや資機材を扱う会社が名を連ねる。不動産デベロッパーも参画しており、セカンドライフで田舎の遊休地に家を持ちたいニーズで強い興味を持たれているという。

 Sphere発売時の出力にあたっては、グローバルでデジタルファブリケーションの「水平分業」構築を見通して、日本、オランダ、中国、韓国、カナダの5カ国の3Dプリンタメーカーに依頼。世界各国で出力されたパーツをプレキャスト素材として日本に運び、第1棟目の長野県佐久市を皮切りに、岡山、静岡、大阪、福岡、大分と全国6カ所で組み立てる計画だ。

 建築用3Dプリンタの技術革新は速く、これまで不可能だった造形でもできることが増えている。飯田氏はその広がりに期待し、「ゆくゆくはコンクリ以外の素材を用い、キッチンや家具、建具なども3Dプリンタで作りたい」と口にする。今は特注で作ってもらっている窓やドアなども、樹脂の3Dプリンタで作れるように、コンソーシアム内の企業に施工方法や素材などの研究を依頼しているとのことだ。

 セレンディクスは、日本で初めて3Dプリンタによる住宅を作った会社として多くの注目を集めた。しかし、自らが施工する方針はないという。セレンディクスは、3Dプリンタの制御や住宅建築用のデータを研究・開発し、データを建築会社に販売する。建築の施工は、各地の施工会社が行う。同時に設計や施工の技術などに関する特許も取得・管理し、将来的には材料の供給も行う。これがセレンディクスのビジネスモデルだ。

 「国内では3Dプリントの建築がこれまでになかったから、3Dプリント専用の設計ノウハウがない。複雑なデジタルデータを作るのは難しいが、データ自体は汎用化できるので、1度作ってしまえば同じような家を作るのはたやすい。当社は、3Dプリント住宅で先行しているので、他よりも知見があるのが強み」(飯田氏)。

Sphere
Sphereのイメージ 提供:CLOUDS Architecture Office

 今後の展開は、建築家の曽野正之氏とタッグを組んで、フランク・ゲーリーやザハ・ハディドのような“アンビルド”の家の設計を依頼している。3Dプリンタの進化は日々進んでいるため、「あえてマシンの限界に制約を設けず」自由に設計してもらっている。

 また、2025年の大阪・関西万博でも、3Dプリンタ住宅を出展する計画がある。また、直近では、2023年12月に2階建てバージョンのSphereのリリースを予定している。

 飯田氏の未来ビジョンでは、2030年には住宅ローンが皆無の3Dプリンタ住宅を集めた街を思い描く。しかし、多数の3Dプリンタ住宅を作るには、オペレーターが圧倒的に不足している。そのため、3Dプリンタによる建築で多くの知見を持つ、慶応大学 田中浩也氏の研究室に相談し、オペレーターの育成にも力を入れている。施工技術も、化学メーカー数社と研究に乗り出している。

 法規制、素材、人材など、まだまだ壁がある3Dプリンタ住宅だが、こうした問題はコンクリ住宅の規制緩和や技術の進歩とともに解決するのではないだろうか。今後、3Dプリンタ住宅が市場で標準なものとなっていくか、動向に注目したい。

【訂正】記事の初出時に、Sphereの組み立て時期などに誤りがあったため、訂正しています(2022年12月19日18時55分)。

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