デジファブの可能性――仏彫刻作品を日比野克彦氏と前田建設の木造ロボットが制作:デジタルファブリケーション
前田建設工業は、日比野克彦氏監修のもと、大規模木造用のロボット加工機で、ニコラ・フロック氏の作品を制作した。
前田建設工業は、ICI総合センターで開発中の大規模木造用ロボット加工機を用いて、東京藝術大学 美術学部長の日比野克彦氏監修のもと、科学探査スクーナー船タラ号の太平洋プロジェクトで乗船したアーティストのニコラ・フロック氏の作品「珪藻(けいそう)」「ディノフラゲラート」の2点を制作。岐阜県美術館で開催されている円空大賞展に出品した。
人の手でも加工が難しい彫刻をロボットのみで実体化
フロック氏は、共焦点レーザー走査顕微鏡から得られる3DデータをS. Colin氏、Plancton Planet、CNRS Roscoffから提供を受けた。珪藻ならではの表面を覆う微細な多くの穴など、人の手でも加工が難しい彫刻をICI総合センターではロボットのみで忠実に実体化し、世界でも、希少な芸術とデジタルファブリケーションの共創を実現した。
大規模木造用ロボット加工機は、前田建設工業と千葉大学で共同開発を進める木造新生産システムから生まれたBIMモデルから、木材を自動加工することができる機器。精密加工や曲線加工にも応じる特性を生かし、伝統建築における装飾なども再現することが可能だという。
今回、本ロボット加工機の性能に注目した日比野氏と、Tara Ocean財団からICI総合センターが依頼を受け、ニコラ・フロック氏の作品を実体化することとなった。日本での展示会にあたり、オリジナル作品を輸送するには、石造のため、困難とされていた。
円空大賞展へフロック氏の作品を出展するにあたり、フランスにあるオリジナル作品は石造であるため、輸送が困難という課題がありました。そこで、ICI総合センターへ作品の3Dデータを送信し、データをロボット加工機へ入力することで、短期間に作品が完成した。
今後、デジタル工作機械で、3次元データをベースにさまざまな素材から切り出し、成形する“デジタルファブリケーション”が広がれば、輸送に頼らない新しい展示の方法も可能となる。例えば、珪藻という作品では、表面を覆う無数の微細な穴を表現することが重要とされていたが、ロボット加工機が人の手の様に切削用刃物などツールを持ち変え、段階を踏みながら、一つ一つ丁寧かつ高精度に加工することによって実現したという。
日比野氏は、「芸術家の目の付け所をデータからロボットで忠実に再現するのは、彫刻家にとっても新たな世界が広がる」と期待を寄せる。
前田建設工業も、誰もが芸術家になれたり、芸術がビジネスとして社会実装されたりする、暮らしを豊かにする芸術がより身近なものとなったと意義を強調する。同時に建築分野では、ロボット加工機で職人の技を使える「人工技能」を目指していくとしている。
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