AIによる人体検知を搭載した建機の運搬自動化、実用化に目途:建機自動化
大成建設と諸岡は共同で、クローラダンプをベースに人体検知システムを搭載した自動運転クローラダンプ「T-iROBO Crawler Carrier」を開発した。
大成建設と諸岡は共同で2019年11月27日、諸岡社製クローラダンプ「MST-2200VDR」をベースマシンに人体検知システムを搭載した自動運転クローラダンプ「T-iROBO Crawler Carrier」を開発したと公表した。既に検証試験で、安全性の確保と運搬作業の自動化が確認され、実用化に目途がついたという。
ルートは「座標入力」や「ティーチング」で指定
大成建設では、建設機械の自動化技術の確立を目指し、2013年より無人で作業を行う建設機械「T-iROBO」の開発に取り組んできた。今回開発したT-iROBO Crawler Carrierは、土砂を指定ルートで運搬し、指定場所で排土した後、再度積み込み場所へ戻るまでの一連の運搬作業を全て自動で行う。
ルートは、出発点や到着点などの走行路の座標入力や一度有人で走行させたルートを記憶させる「ティーチング」によって指定する。走行路が複雑な場合は、走行路のティーチングによるトレース走行が有効となる。
ルート上にいる人の検知には、パナソニック アドバンストテクノロジーの人工知能(AI)と画像処理を組み合わせたモビリティー技術を応用している。搭載カメラおよびセンサーにより、走行路内で認識した人体との距離に応じて、自動で「減速(標準設定値6メートル)」、または「緊急停止(標準設定値3メートル)」する。なお、搭載カメラの画像から人の姿が見えなくなると、5秒後に自動運転を再開する。
人体検知と同様の技術で、ルート上の障害物を認識して、走行可能な広さがある場合は自動で迂回走行し、回避できない場合には自動で停止する。この場合は、障害物が除去されるまで停止したままだという。
検証試験では、造成現場内の走行路(L=200メートル)で、自動運転により土砂運搬作業を行った結果、平均時速5キロ、1時間当たりの搬送能力7〜8回分(合計約40立方メートル)の作業を行った。人と障害物の回避では、走行路に人形または障害物を置いて、減速と緊急停止することが確認された。
通信方法は、5Gに対応しており、運搬作業や安全性に関わる様々な情報を送受信する。現場検証では、可搬型5G設備を用いた自動運転を行い、5G通信システムの適用が可能なことも実証された。
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