英国土地登記所が不動産取引きのデジタル化を加速、4年以内に5兆円の経済効果:不動産テック
英国の不動産取引きを所管する政府機関HM Land Registryは、デジタル化の歩みを加速させる。英国内の不動産テックを採り入れることで、不動産手続きの大幅な電子化による効率化を進め、新たな市場のエコシステムを創出し、今後4年以内には5兆円の経済効果を見込む。
英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省が所管するHM Land Registry(HMLR:土地登記所)は2022年8月末、土地登録システムをデジタル化して効率的に運用する新たな戦略を開始した。
不動産テックで複雑な不動産取引の待ち時間を短縮
計画では、住宅購入プロセスを高速化させることで、不動産市場全体の活性化につなげる。今回の戦略はDXの一環と位置付けており、不動産テックなどのパートナー企業と協力し、不動産の取引きをサポートするデジタルサービスのオープンな経済圏の構築を目指す。市場には特に、ユーザーを識別するデジタルIDや電子署名などこれまでに採用されていなかった技術を導入していく考えだ。
今回の発表は、Strategy 2022+に基づく3カ年のロードマップを示す事業計画。Strategy 2022+ではイングランドとウェールズでHMLRが保持している約2600万件の土地登記を対象に手続きのデジタルへの移行を進める。利用者側で発生する遅延時間を縮減し、最先端のデジタルツールやソリューションを導入できるようにする。
不動産取引きのプロセスは従来、大量の書面によるやりとりと長期間のリードタイムが必須だった。申請時の利用者サポートも欠かせず、HMLRへの1日約3500件にも及ぶ申請は25%が何らかの手続き上のフォローを必要としている。さらに、より複雑な手続きでその割合は60%超に跳ね上がった。また、非デジタル化による少ない事前の情報により、不動産取引きの最大8%が失敗するだけでなく、買い手は1件あたりで最大約2700ユーロの追加費用が発生していた。
そのため、デジタル化を進めることで、大幅なペーパーレス化と手続きの高速化を進める。具体的には、不動産テックのアプリケーションによって、顧客側に発生する回避できないミスを未然に防ぎ、サポートの手間も減らす。さらに、顧客や関連事業者が必要とする情報にリアルタイムでアクセスできるようにするほか、データの相互連携も可能にする。デジタルIDやデジタル署名を導入するメリットは、利用者が取引きの過程で、同じ情報を異なる相手に何度も送る手間が省ける。
さらに、デジタルインフラにも投資することで、システムのエラーからの回復を高め、ダウンタイムとサイバーリスクを抑えるために、セキュリティを向上させ、トラフィック監視も強化する。
計画では、2023年から2024年にかけてHMLRでの70%の業務を自動化し、地価情報の約70%もデジタル化する。2024年から2025年以降には申請プロセスに詐欺やサイバー犯罪のリスク対策を組み込み、不動産デジタル化の標準化にも取り組むという。
HMLRでは、今後4年以内に不動産取引きのデジタル化を進めることで、イギリス経済に約30億ポンドの経済効果をもたらすと試算している。
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