【特別寄稿:前編】アドビ独自の業界別調査から見えてきた“不動産テック”の実態:“不動産テック”を阻む諸課題とその対応策(前編)(1/2 ページ)
本連載では、アドビが独自に実施した調査データを踏まえ、不動産業界での業務のデジタル化に立ちはだかる現状の課題を整理し、宅建法改正を受けて業務がどのように変わっていくのかを、アドビ デジタルメディア ビジネスマーケティング執行役員が前後編に分けて解説します。
さまざまな業界でDX推進が叫ばれているなか、法改正などの追い風もあり、バックオフィス業務や基幹業務で、従来は紙でやりとりされていた業務のデジタル化が進んでいます。他業界に比べると立ち遅れていた不動産業界でも、2022年5月に改正宅地建物取引業法(宅建業法)が施行されたことで、今後は急速にデジタル化が進むと予測されています。
本稿では、アドビ独自の調査データをもとに、不動産業界を取り巻くデジタル化の課題を改めて整理し、法改正で業務が今後どのように変わっていくのかを解説します。
業界で最もDX化が遅れている不動産業界
アドビでは、2022年1月に「営業職の現場業務のデジタル化状況調査」の結果を公開しました。調査は2021年11〜12月にかけて、インターネット上で営業職のビジネスパーソンを対象に、営業業務のデジタル化状況をリサーチしました。調査結果を業種別に比較したところ、不動産業界のデジタル化が最も遅れていることが判明しました。
調査項目は、営業職の主要業務を「経費精算」「出退勤記録」「社外との契約書」など、5項目に分類し、それぞれの業務で、どのような方法で処理をしているかを質問。その結果、全業界でデジタル化が最も遅れているのは「社外との契約書」で、「紙の書類に担当者の判子(ハンコ)や手書きサインで対応している」「紙の書類に社員で対応している」と回答した割合は62.5%となりました。
不動産業界に限ると、73.3%まで増加し、他業界よりも高いことが分かりました。さらに、不動産業界の電子署名・電子サイン利用率は11.3%にとどまり、全業界で最も低い数値となりました。
「電子署名/電子サインの利用において困っていること」についての設問では、全体で最も多かったのは、「取引先で電子署名/電子サインツールが採用されていない(電子署名/電子サインでの締結を認めていない)」が29.2%でした。
不動産業界に限定すると、「取引先が電子署名/電子サインツールの使い方がわからない(35.3%)」が最多。その次に「取引先で電子署名/電子サインツールが採用されていない(電子署名/電子サインでの締結を認めていない)(29.4%)」の順となりました。
不動産業界の取引先は、法人もあれば個人もあり、ITリテラシーの幅が他の業界よりも広くなることから、このような結果になったことがうかがえます。
一方で、「出退勤記録」などの社内業務では、不動産業界でもデジタル化が進んでおり、まずは対応可能な業務からDXを進めていることが予測されます。
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