白金ナノ粒子を一様に分散・固定した高活性光触媒を開発、大成建設:導入事例
大成建設は、放射線法を用いて二酸化チタン表面にナノサイズの白金粒子を一様に分散・固定した高活性な光触媒を開発した。今回の光触媒は、空気中の多様な化学物質を高速に分解・除去するとともに、長時間にわたり浄化性能を維持でき、生産施設で発生が問題となる化学物質の排ガスの処理だけでなく、シックハウスガスや臭気の浄化といった幅広い用途への適用が期待されている。
大成建設は、放射線法※1を用いて二酸化チタン表面にナノサイズの白金粒子を一様に分散・固定した高活性な光触媒を開発したことを2022年6月16日に発表した。
※1 放射線照射により貴金属のナノ粒子を素材に固定する方法であり、アクト・ノンパレル(大阪大学発ベンチャー企業)の開発技術。
少量でありながら約5倍の除去速度
光触媒を活用して空気中の化学物質を浄化する際には、これまで白金など※2のナノ粒子を二酸化チタンに固定させることで、分解性能が向上する。しかし、従来の方法では、ナノ粒子を一様に分散・固定させることが困難なため、所定の性能を得るには、ナノ粒子の量を増やす必要があり、光触媒自体のコストアップにつながることが課題となっていた。
※2 白金など:二酸化チタンに、白金の他、パラジウム、銅などのナノ粒子を固定すると、化学物質の分解性能が向上。
そこで、大成建設は、放射線法を使用し白金ナノ粒子を一様に分散・固定させ、上記の課題を解決する高活性な光触媒を開発した。
今回の光触媒を開発するに当たり、大成建設は、多孔質の二酸化チタン粒状体に白金ナノ粒子を、従来法(含侵法)と放射線法を使い、それぞれ固定させた光触媒を用いて、クリーンルームで取り扱うイソプロピルアルコール(IPA)※3の除去性能を検証。
その結果、放射線法で製造された光触媒は、従来法で固定させた光触媒に比べ、白金ナノ粒子の量が10分の1と少量でありながら約5倍の除去速度を持つことを確認した。
新たな光触媒は、多様な化学物質の分解が可能で、IPAや分解が困難なトルエン、アセトン、メチルエチルケトンも浄化することを確かめた。
さらに、一般的な化学物質の処理に使用される活性炭による吸着除去と新たな光触媒にそれぞれ所定濃度のIPAを連続的に通気させ、浄化性能を比較した。その結果、新たな光触媒の場合、運転10カ月後もほぼ100%の除去率を維持。
加えて、LCC(ライフサイクルコスト)の試算では、新たな光触媒はラニングコストが低く、運転4年目で交換頻度の多い活性炭を下回ることが分かった。
今後は、新たな光触媒の優れた化学物質処理性能を生かし、化学物質対策が求められる生産施設やオフィス、居住空間の空気浄化技術として、展開を推進していく。また、昨今、世界中で課題となっているウイルス不活化に対する新たな光触媒の有効性についても検討していく見込みだ。
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