「光触媒除菌脱臭機」による感染弱者への感染症予防効果を確認、日大とカルテック:産業動向
日本大学 医学部とカルテックは2021年4月に、日本大学医学部付属板橋病院で、共同研究を行い、カルテック製「光触媒除菌脱臭機」が感染症対策に効果があることを確認した。共同研究では、実使用環境下で、感染弱者である免疫力が低い高齢者や基礎疾患を持つ患者に対し新型コロナウイルス感染症だけでなく、一般の細菌やウイルス、真菌の感染症予防で光触媒除菌脱臭機が役立つことが判明した。
日本大学 医学部 内科学系血液膠原病分野とカルテックは2021年10月11日、都内で記者発表会を開催し、共同研究で、光触媒を搭載した除菌脱臭機が感染症対策に有効だと公表した。
会場では、カルテック 代表取締役社長 染井潤一氏と日本大学 医学部 病態病理学 臨床検査分医学分野 飯塚 和秀氏が、光触媒を搭載した除菌脱臭機の概要や共同研究の内容を紹介した。
20分の稼働で新型コロナウイルスを検出限界以下まで不活化
日本大学 医学部とカルテックは、2020年10月に理化学研究所と協力し、カルテック製の「光触媒除菌脱臭機」を用いて、密閉型チャンバー内に浮遊する新型コロナウイルスに対する光触媒の有効性について共同研究を行った。
光触媒除菌脱臭機は、酸化チタンを使用した光触媒デバイスやエアロゾルを発生するネブライザー、ウイルスを捕集するエアーサンプラーで構成され、機体の下部から空気を取り込み、空気中のウイルスを光触媒デバイスで水と二酸化炭素に酸化分解し、清浄化された空気として排出する。
カルテックの染井氏は、「今回の研究で活用した光触媒除菌脱臭機は、当社が市販している光触媒除菌脱臭機“KL-W01”と同等の性能だ」と市販品でも新型コロナウイルス対策を図れることを強調した。
共同研究では、新型コロナウイルスが浮遊する実験ボックス内で、光触媒除菌脱臭機を20分稼働させた後、実験ボックスから新型コロナウイルスを回収し、ウイルスの力価を調べた。結果、取り出した新型コロナウイルスの力価は検出限界以下となり、光触媒の感染力抑制効果を確認した。
上記の時点では、新型コロナウイルスの感染拡大により、実使用環境下にて新型コロナウイルスの感染対策に光触媒除菌脱臭機が効果があるか検証できていなかった。しかし、患者の負担にならない点などを踏まえて、2021年4月に、理化学研究所と共同で、日本大学医学部付属板橋病院に配置された複数の病室に光触媒除菌脱臭機を設置した。
日本大学 医学部の飯塚氏は、「日本大学医学部は、2021年4月に光触媒除菌脱臭機を取り付けた病室では、設置前後で感染症の発症者数に差があるのではないかと想定し、さまざまなデータの集計と解析を行った。具体的には、悪性腫瘍や膠原病を持つ患者の病室に、光触媒除菌脱臭機を完備し、設置前後1カ月間を対象に、65歳以上の感染発症率や基礎疾患を有する患者の感染発症率、発熱性好中球減少症※1(FN)の発症率における変化をリサーチした」と話す。
※1 発熱性好中球減少症:緊急事態として対応することが要求される病態で、一般的に好中球は白血球の一種で血液中にある全白血球の約45〜75%を占めるが、発熱性好中球減少症では、血液中の好中球の数が減少し、感染症に対する制御がきかなくなり、感染症で死亡するリスクが高まる
調査の結果、光触媒除菌脱臭機の設置前後1カ月で、FNの患者が12人から3人に激減し、なかでも65歳を超える高齢のFN患者は10人から2人に減り、減少が顕著だった。また、基礎疾患を持つ65歳以上の高齢患者と65歳以下の患者でも感染症を発症する人が減少した。
飯塚氏は、「新型コロナウイルス感染症患者の発生は、減少傾向になったが、高齢者や基礎疾患を有する免疫弱者は、通常の感染症でも危険にさらされている。こういった免疫力が低い感染弱者に対し、本研究では光触媒除菌脱臭機で、感染予防を図れることが分かった。また、国内では、高齢化社会が進むにつれ、高齢者施設や抗がん剤治療後のがん緩和ケアを受ける患者が増加してくることが予想される。これらの患者が感染症に苦しむ心配を減らし、穏やかな生活を提供できる一助に本研究の結果がなれると考えている」と語った。
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