4足歩行ロボとドローンに搭載した3次元計測システムの有効性を確認、大林組:ロボット
大林組は、東京大学大学院工学系研究科とともに、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドで、自律4足歩行ロボットとUAVを用いたトンネル断面3次元計測の実証実験を実施し、複数の断面計測を連続的かつ効率的に行えることを確かめた。今回の実証実験は、国土交通省が推進する「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の一環で実施した。
大林組は、東京大学大学院工学系研究科とともに、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドで、自律4足歩行ロボットとUAVを用いたトンネル断面3次元計測の実証実験を実施し、複数の断面計測を連続的かつ効率的に行えることを確認したことを2022年6月14日に発表した。
測定にかかる時間を従来の約30分の1に短縮
東京大学と大林組が共同で開発した「光切断法※1を用いた山岳トンネル断面計測システム」は、1断面の計測で要する作業人員を約4分の1に減らせ、計測時間も約120分の1に省人化・省力化する。
※1 光切断法:直線状に光が照射される「ラインレーザー」とカメラを用い、レーザー光の進行方向とカメラの光線ベクトルの三角測量の原理により3次元計測を行う方法であり、リングレーザーと魚眼カメラを採用することでトンネル断面に適用している。
具体的には、従来は固定した三脚の上にリングレーザーと広視野カメラを設置して使用し、複数断面の計測を行う際に、その都度、人が計測装置を移動させる必要があったため、手間と時間がかかっていたが、上記のシステムをロボットに搭載することで、複数断面の計測を連続的かつ効率的に実施できる。
システムのロボットには、15センチ以下の凸凹した不陸(ふりく)や轍(わだち)、ぬかるみ、砕石上を問題なく移動できるBoston Dynamics製の自律4足歩行ロボット「Spot」と、測量業務で幅広く使われアタッチメントの改良が容易なDJI製ドローン「MATRICE 300 RTK」を採用した。
Spotは、背中の角度や高さを調整するため、さまざまな角度でレーザーを照射可能で、天端(てんば)からの湧水や建設機械と車両の往来により生じるぬかるみといった切羽(きりは)付近の悪路にも対応するため、掘削出来形の計測にも適用する。
さらに、複数のカメラが内蔵されており、これらのカメラはARマーカーを認識し、事前にARマーカーを認識させ移動経路を設定すると、2回目以降は自律歩行も行える。この機能により、トンネルや地下通路を任意の時刻に自動で動画撮影しながら断面の計測が行えるため、竣工検査時の初期点検や定期的な日常点検などにも有効だ。
加えて、積載重量制限や寸法制限を考慮し、それぞれの装置に適したリングレーザーと広視野カメラを選定した他、それらを固定する部材は、3Dプリンタで製作した樹脂製のものを使用して、軽量化を図った。
1断面の計測は、リングレーザーのスイッチがオンとオフの状態で写真をそれぞれ1枚撮影し、背景差分法※2によってレーザー照射点のみを画像から自動抽出後、3次元座標(点群)を計算する。
※2 背景差分法:背景画像(レーザーオフの状態)と観測画像(レーザーONの状態)を比較することによって、物体を検出する画像処理手法。
今回の実証実験では、地上を自律歩行するSpotと空中を飛行するドローンに計測装置を備え、レーザーのスイッチ切り替えを高速で繰り返し動画撮影することで、複数断面を連続的に測れることを確認し、ロボットを活用することで、測定にかかる時間を従来の約30分の1に短縮した。
今回、ロボットに前述のシステムを搭載することで、複数断面を連続的かつ効率的に測れることを確認した。今後は、複数断面の計測結果を統合する手法の確立を図りつつ、地下躯体内や橋梁(きょうりょう)下面での適用など、山岳トンネル以外へ適用していく。
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