四足歩行ロボット「Spot」の自動巡回と遠隔操作で現場実証、10%の負担軽減で“残業規制”の有効策に:ロボット
竹中工務店と竹中土木は、四足歩行ロボット「Spot」を用いた現場監視の有効性を建築と土木の実現場で検証した。両社は、Spotによる現場の自動巡回が、2024年に建設業に適用される時間外労働の上限規制への有効な対応策になり得ると期待を寄せており、今後は搭載機器のユニット化やOS開発などを進める。
竹中工務店と竹中土木は2021年9月14日、米Boston Dynamicsの四足歩行ロボット「Spot」を用いた複数回の実証実験を経て、実際の建設現場で自動巡回の有効性を確認したと明らかにした。これにより、工事記録写真の撮影、工事の進捗管理、資機材の配置管理など、現場管理業務にかかる負担をおよそ10%軽減することを見込む。
これまでSpotの実用化に向けて両社は、2019年10月から関東、関西、九州の建築工事現場と、東海の土木工事現場で遠隔操作の実証実験を実施し、2020年12月には鹿島建設も加わり、共同研究を進めてきた。今回行った現場検証の成果は、3社連携にフィードバックすることで、工事現場の働き方改革実現や先進的な技術の積極的な導入につなげ、建設産業の魅力向上を目指している。
工事進捗で日々変わる現場環境でも自動巡回が可能に
従来、Spotの活用は、建設現場では工事の進捗によって環境が変わるため、自分の位置や経路をSpotが把握して自動巡回することは難しいとされてきた。
そのため、今回の実証実験では、標準の3DLiDAR(3次元レーザ測域センサー)を利用するとともに、Spotの背中に全天球撮影カメラを搭載し、自動巡回しながら工事進捗管理や資機材管理のための写真を撮影した。新たな自動巡回を実現する搭載機器により、仮に事務所ビルの建築工事などで、前日に通ったルートに新しく間仕切り壁が設置され、ルートの片側半分が大幅に変更された状態でも、エラーを起こすことなく、同じルートを移動することが可能になった。
また、建物1階から工事中の建物をスロープや階段を利用して、指定された4階の確認フロアを自動巡回して戻ってくるといった日常の運用を想定したテストにも成功した。
遠隔操作のための機器としては、Spotの背中に、標準装備の360度カメラと光学30倍ズーム付きパンチルトカメラのほか、首振台座付きタブレット端末、小型プロジェクター、通話装置、これらをコントロールする小型コンピュータとバッテリー、遠隔通信を可能とするLTEモバイルルーターを備える。
遠隔操作により、遠隔地のオペレーターが自身のPCや専用コントローラーを操作することで、Spotを介して建設現場内を自由に移動しながら作業の確認をしたり、現地の作業員らとモニターやプロジェクターで投影された資料や図面を共有しながら打ち合せをしたりすることが可能になる。加えて、遠隔操作できる測量機も装着することで、離れた場所から寸法や精度管理業務なども行える。
さらに、実験は建設現場と現場事務所といった数百メートル離れた場所だけでなく、都心のオフィスから県をまたいだ地方の作業所にあるSpotを操作し、現地を巡回したり、作業員とコミュニケーションをとったりする試験も行い、通信遅延やデータ容量についても問題が無いことも実証されている。
今後、竹中工務店と竹中土木は、2024年に予定されている時間外労働の上限規制への対応策の1つとしてSpotの導入を進めるべく、搭載機器を建設現場の担当者でも簡単に扱えるようにユニット化し、利便性を向上させたオペレーションシステムの開発にも着手する。搭載ユニットについては、他の移動ロボットへの応用も視野に入れ、OSは現在開発中の「建設ロボットプラットフォーム」と連携させるという。
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