構造物への補修材吹き付けドローン4号機を初公開、芝浦工大と共同開発:第5回国際ドローン展
西武建設は、「第5回国際ドローン展」で、構造物への補修材吹き付けドローン「スプレードローンSera(セラ)」の新型機を公開した。同機は、芝浦工業大学の長谷川研究室と共同開発し、実用性を重視して有線タイプに戻した試作機となる。
西武建設は、「第5回国際ドローン展」(会期2019年4月17〜19日、幕張メッセ)で、業界初となる構造物への補修材吹き付けドローン「スプレードローンSera(セラ)プロトタイプ4号機(SCSD-004)」を公開した。
4号機は、芝浦工業大学の長谷川研究室と共同開発した新型機で、吹き付け材の入ったタンクを積載して無線で飛行する3号機とはコンセプトを刷新し、実用性にウェイトを置いて、有線による地上からの給電/吹き付けに回帰させた。
〇トンネルのコンクリ含浸材吹き付けなどで豊富な施工実績
スプレードローンSeraは、構造物への補修材吹き付けドローンとして、人の手が届きにくいコンクリート構造物に、必要な養生材などを散布することを目指し2015年に開発をスタート。含浸材、水性塗料、遮熱材、水といった粘性の低い液体などの散布にも使え、コンクリート表面含浸材や養生材の吹付以外にも、トンネル内作業・塗装・洗浄剤清掃・外壁カビ防止・ハチ退治など、高所作業における液体を吹付(スプレー)する現場で、安全確保と活用を想定している。
既に施工実績も蓄積してきており、福島県南相馬市の県道49号にあるトンネルのコンクリート含浸材を吹き付ける承認工事をはじめ、個人農家のビニールハウスへの遮熱材の吹き付けなどで適用され、その有効性を確認している。
今回、初披露した4号機は、有線による地上からの給電/吹き付けに回帰したモデルとなる。本体は独自開発で、吹き付け用のノズルを積んでおり、地上の拠点から伸びたケーブルを通じて、給電/吹き付け材の供給を受ける仕組み。
飛行範囲はおよそ20メートル程度で、理論上は機体仕様の限界まで吹き付け作業を継続して行うことができる。担当者は「有線から無線に発展してきたドローン開発の歴史から見れば(過去に)戻ったともいえる。しかし、あくまで吹き付けの作業性を考慮し、実用性を重視した機体だ」と語る。
本体はプロペラ4枚のクアッドタイプ。フレームにはカーボン、アルミニウム、プラスチックを採用し、寸法は1300×1000×400ミリ。バッテリーも入れた重量は7200グラム。
飛行性能は、最大離陸重量7200グラム(テザー/ホース含まず)、積載可能重量はバラスト重量分までの1000グラム。飛行時間は30分。飛行距離は水平10メートル、最高到達高度は10メートル。飛行速度は水平6メートル/秒、上昇3メートル/秒。耐風性能は3メートル/秒。
吹き付け作業に関するスプレー機能は、地上据え置き型のタンク容量25リットル。飛行中の給液が可能だ。連続運転時間は60分。吐出ホースは20メートル。噴霧距離は水平方向に最大7メートル。ノズルは可動式で、上下左右それぞれ60度の動作角を確保している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 育成実績500人突破、「ドローンエキスパートアカデミー」パートナー企業によるプレゼンも
JUAVAC(ジュアバック)コンソーシアムは、「第5回国際ドローン展」で、「ドローンエキスパートアカデミー」パートナー企業によるプレゼンテーションを行った。 - 「次に来るのは“大脳積んだドローン”」UAV開発の先駆者・野波健蔵氏の講演から探る
日本ドローンコンソーシアム(JDC)の野波健蔵会長(千葉大学名誉教授)は、「第5回国際ドローン展」で特別講演を行った。野波会長は、1998年から完全自律型ドローンのマルチコプター(UAV)開発に携わり、大学発ベンチャー自律制御システム研究所(ACSL)を立ち上げるなど、国内におけるドローン界の第一人者。これからのドローンには何が必要か、また、土木・建築領域で活用が拡大していくにはどんなことが壁になるのかを野波会長の講演から読み解く。 - 50分間のフライトを実現したi-Construction対応の折り畳み式ドローン
石川エナジーリサーチは「第5回国際ドローン展」で、i-Constructionに対応し、長時間飛行が可能な新型ドローン「Build-Flyer(ビルドフライヤー)」を展示した。 - 高精度レーザースキャナー搭載型ドローン「LS1500R」や発売に先立ち“折り畳み式”新型機など披露
enroute(エンルート)は、「第5回国際ドローン展」で3次元測量などに用いるハイエンドレーザースキャナー搭載型ドローン「LS1500R」やDJIのカスタム機などを出展した。