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【特別寄稿:後編】改正宅建法が施行!不動産業界のデジタルシフトは実現するか?“不動産テック”を阻む諸課題とその対応策(後編)(2/2 ページ)

本連載では、アドビが独自に実施した調査データを踏まえ、不動産業界での業務のデジタル化に立ちはだかる現状の課題を整理し、宅建法改正を受けて業務がどのように変わっていくのかを、アドビ デジタルメディア ビジネスマーケティング執行役員が前後編に分けて解説します。

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書面での不動産契約をデジタル化

 不動産情報メディア・不動産業務ソリューションを提供するアットホームでは、2018年より「Adobe Acrobat Sign」を基盤に開発した書面での契約業務をデジタル化する「スマート契約」を不動産会社向けに提供しています。アットホームの加盟店で、神奈川県で不動産業を営むジェイエーアメニティーハウスは、スマート契約をいち早く採り入れました。

 宅建法改正前であったため、同社がデジタル化したのは、賃貸物件の契約更新に関わる書類業務です。契約更新の対象者に、ハガキで契約更新の通知をする際、電子メールアドレスを登録するための専用サイトのQRコードを通知。電子メールアドレスを登録した人には、オンラインでの契約更新手続きができるようにし、希望しない人には従来通り書類で更新の契約を交わしました。

 デジタルの契約更新では、登録されたメールアドレスに契約書類のリンクを知らせます。顧客がリンクを開くと、契約内容の確認や電子サインがWebブラウザ上だけで完了します。Adobe Acrobat Signで処理が行われるので、電子メールアドレスによる本人確認、改ざんができない仕組み、書類の開封や署名のログ記録などが実現できています。

 ジェイエーアメニティーハウスの担当者は、書類の準備や発送に関わるコスト、書類の確認や保管のコストの削減に加え、書類の不備による手戻りの削減、手続きにかかる時間短縮など、業務効率化を実感しており、今後も電子化対応業務を増やしていきたいと話しています。

「選ばれる不動産屋」になるためにDXが急務

 DXを推進するにあたっては、不動産業者はもちろん、取引相手の電子サイン/電子署名の理解を深めることも欠かせません。重要事項説明書や契約内容記載書面の電子化では、取引相手の承諾が必要なため、丁寧な説明が求められます。

 コミュニケーション面では、Adobe Acrobat Signは一般企業に広く普及しているMicrosoft Teamsと連携し、オンラインによる対面署名が行えるように準備を進めています。これにより、重要事項説明など、これまでは対面で説明が必須だった業務もオンラインで完結できるようになります。


Adobe Acrobat Signを使えば、取引先に出向いて対面で行っていた重要事項説明などがオンラインで済むように Photo by Adobe Stock

 また、追い風になることとしては、成人年齢の18歳への引き下げによって、デジタルネイティブ世代が契約対象になったことです。彼らは、むしろ紙でのやりとりよりも、オンラインでのやりとりの方が慣れている傾向があるため、不動産業界でも対応が迫られることになりそうです。オンライン対応していない不動産業者は、若年層の顧客から避けられてしまうこともあり得るので、紙での契約と、オンラインでの契約の双方に対応することが急務です。

 法的に有効な電子契約では、誰が契約したのかが分かる「本人性の確認」と、改ざんされないようにする「非改ざん性の確保」が要件になります。これらの要件に応じた電子契約システムを導入することが、DX推進の第一歩になるでしょう。

著者Profile

竹嶋 拓也/Takuya Takesima

2019年2月アドビ入社、2020年10月デジタルメディア 執行役員ビジネスマーケティング本部長に着任。アドビ以前には、アマゾンの広告事業にてセールスマネージャー、medibaにて広告商品の開発・運用の責任者を務める。また、博報堂で営業職、インタラクティブマーケティング職、ビジネス開発職、大手レコード会社でデジタルビジネスマネージャーなど、デジタルマーケティング分野での要職を歴任。一貫して、デジタルにおける卓越した顧客エクスペリエンスを企業マーケティング活動に展開させることに貢献している。

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