スマホとマイナンバーカードだけで不動産取引、東急リバブルとGMOグローバルサイン・HDが2022年春に実用化:不動産テック
東急リバブルと、GMOグローバルサイン・ホールディングスは、不動産売買契約の電子化に向けた研究開発に乗り出した。2022年春にも電子署名システムを実用化し、不動産取引のデジタル化時代にいち早く対応する。
東急リバブルと、GMOインターネットグループのGMOグローバルサイン・ホールディングス(HD)は2021年12月8日に業務提携し、マイナンバーカードを利用した本人認証を用い、実印相当の効力を持つ不動産売買契約の電子署名実用化を目標に、利用方法や利用シーンなどの研究開発を開始した。不動産売買契約でマイナンバーカード認証による電子署名実用化の取り組みは先例がなく、同社によると日本初の試みだという。
スマホとマイナンバーカードだけで、安全かつ便利な不動産取引が実現
共同開発の背景には、不動産売買契約のオンライン化を全面的に解禁することを定めた改正宅地建物取引業法の施行がある。同法は、2022年5月までの施行予定となっているため、それまでには不動産売買契約の完全オンライン化が法律で認められるようになる。
これまでの不動産売買契約では、実印を利用することで取引の安全性を担保していた。仮に不動産売買契約の完全オンライン化が全面解禁されても、単に利便性だけではなく、厳格に本人確認をした安全性の高い電子署名が求められることが想定される。しかし、一般的に普及しているメール認証などでの本人性の担保では、電子署名での第三者によるなりすまし被害が発生する懸念があった。
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2017年からスタートした東急リバブルのDX推進について、これまでの歩みを振り返りつつ、その成果として、外壁のひび割れ診断システムなど、デジタル時代に対応するべく独自開発した3種のAIサービスをDX推進課の担当者が解説します。
また、直近のトピックスとして、GMOグローバルサイン・HDとの連携による国内初を謳う、不動産売買契約の電子署名化など、今後さらに広がりをみせる不動産テックの取り組みも紹介します。
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こうした法令動向を受けて、東急リバブルは、来るべき不動産取引のデジタル化時代に対応する体制整備を進める一環で、個人間の不動産売買契約を電子署名で行うにあたり、利便性と安全安心、さらに業務効率化も必要不可欠なため、マイナンバーカードを活用することが有効であると見定めた。
一方でGMOグローバルサイン・HDは、電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」に、マイナンバーカードを利用した実印相当の本人確認ができる「マイナンバー実印」の機能を追加していた。
そのため、不動産取引の電子化に対する方向性が一致する両社は、従来の書面契約に代わり、実印と同等の高い本人性を保持する電子署名の実用化を目標に、共同で研究開発すべく、今回の業務提携に至った。
不動産売買契約で、マイナンバーカード認証による電子署名が実用化されれば、不動産売主、買主、仲介業者のコストや手間が改善されるだけでなく、これまで以上に信頼性の高い本人確認が実現するため、取引の信頼性向上にもつながる。
電子署名の流れとしては、署名依頼を受けた顧客が、スマートフォンアプリをインストールし、マイナンバーカードをかざすと、公的個人認証サービス「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」を通して本人確認した上で、GMOグローバルサイン・HDの連結会社でパブリック認証局のGMOグローバルサインが電子証明書を発行。発行された電子証明書は、実印と同等の効力がある電子署名となり、本人確認書類や契約書に貼付する印紙代を必要としない。さらに、関係書類もクラウド上で閲覧可能となり、これまでのように紙の書類を持ち運ぶ手間も無くなり、遠隔地に居ながらにして、不動産契約が完了する。
電子証明書の発行に際しては、公的個人認証サービスで本人確認を実行するため、不動産売買契約の当事者が特定できる。同時に、犯罪収益移転防止法で規定されている本人確認も完了する。
今後、東急リバブルとGMOグローバルサイン・HDは、共同で研究開発を進め、2022年春をめどに実用化を目指す。また、関係書類保管のクラウド化にも着手し、さらなる利便性向上及び業務効率化を図り、不動産DXを推進していく意向を表明している。
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