オープンハウスが米国不動産事業で完全電子契約化、2022年5月の国内宅建業法改正を見据え:不動産テック
オープンハウスは、国内同様に仕入・販売・管理・売却を一貫して行うワンストップサービスを展開している米国の不動産事業で国内に先立ち、全ての契約手続きをオンライン化した。不動産DXの整備により、紙ベースの業務と比較して、年間で4000時間の業務効率化を見込んでいる。
オープンハウスのアメリカ不動産事業を担当するウェルス・マネジメント事業部は、米国不動産の購入や売却に関わる全ての契約手続のオンライン完結を実現したことを2022年2月18日に発表した。米国では多くの不動産取引が既にオンラインで完結するなか、日本の商慣習上で必要とされてきた書類の郵送などの手続を廃止し、2022年5月に国内で施行予定の改正宅地建物取引業法に伴う国内電子契約の本格化を見据え、電子化の態勢を整えた。
DX化で年間4000時間の業務効率化、900万円の費用削減
オープンハウスグループは、2017年8月から海外の不動産事業に進出して以降、米国での管理物件数は3000棟(2022年1月31日時点)を突破した。米国不動産については、日本での宅建業法の適用外となるものの、従来は日本国内の取引と同様に紙の郵送による取引や対面での契約が多用されていたという。
しかし、米国では、既に電子契約が多くを占めてつつあり、加えて日本でも、2022年5月には、デジタル社会の形成を図るために関係法律の整備に関する法律第17条に基づく宅建業法の改正で、不動産取引の電子契約が本格化することが見込まれている。
今回の取り組みにより、国内の不動産に先んじて、米国の不動産で、オンラインでの取引完結が可能となる態勢が実現する。
オープンハウスでは、2020年4月の緊急事態宣言発出以降、現在に至るまで行動が一定程度制限されるなかで、顧客からは一刻も早い面談や契約のオンライン化を要望する声が寄せられていた。そのため、国内でも電子契約化することで、安心安全な契約手続きを顧客自身が選択できるようになるとしている。
また、これまでは移動時間の制約から接触機会が限られ、購入申込が競合する案件では不利になるケースも多かった。電子契約化で、遠方に居住していても投資機会を逸失することなく、迅速な手続きの進行が可能となり、即購入にも応えられるようになる。
ウェルス・マネジメント事業部では、書面への押印や署名により取り交わしていた契約締結手続を電子署名で行う方式へ切り替えた他、郵送していた書類を電子メール経由での送付、各書類の保管はデータ化してクラウド上で厳重なセキュリティの下に保管する方式へと変更。その結果、契約書類の印刷や郵送、物理的な押印などの各工程が無くなり、社員が全国各地の顧客の元へ赴く移動時間や交通費といった諸経費も削減され、事業部内で年間約4000時間の業務効率化、約900万円の費用削減が実現する。併せて、紛失による漏洩(ろうえい)による潜在リスク低減や保管スペース削減などの業務上の効果も報告されているという。
また当社は、こうしたICTによる人・物の移動削減により、CO2排出量削減も目指しております。
オープンハウスのアメリカ不動産事業は、国内不動産事業の強みである製販一体型ビジネスモデルを踏襲し、仕入・販売・管理・売却を一貫して行うワンストップサービスを提供している。現地を熟知した日本人スタッフにより、購入後の
資産としての運用や最終的な売却までを意識した物件選定、グルー
プ金融会社による購入時の資金に関する相談にも応じている。
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