太陽光パネル施工管理システムの試験運用を開始、旭化成ホームズ:産業動向
旭化成ホームズは、太陽光パネルの施工を効率化する「ボルト管理システム」を開発した。今後は、太陽光システムの設置数増加を見据え、施工精度の向上と施工・管理の省力化を同時に達成し、脱炭素社会の実現への貢献を目指す。
旭化成ホームズは、旭化成のグループ会社とともに、同社が提供する戸建て住宅「ヘーベルハウス」と賃貸住宅「ヘーベルメゾン」に設置する太陽光パネルの施工に向け、AIを含むDX技術を用いた「ボルト管理システム(特許出願中)」を開発し、2022年4月に試験運用を開始した。
締められたボルト箇所の記録」をエビデンスとして保存
海外では多数の政府が、温暖化対策として、脱炭素社会の実現を目標に施策を展開しており、国内でも「2050年までにカーボンニュートラルの達成」を目標に掲げ、さまざまな取り組みを推進している。
こういった状況を受けて、旭化成グループでは、サステナビリティ基本方針の中でテーマ「Care for Earth」を設け、温室効果ガス削減の推進や貢献などを通して「カーボンニュートラルでサステナブルな世界の実現」を目指すことを表明している。
旭化成グループの住宅事業を担う旭化成ホームズも、2019年に環境イニシアチブ「RE100」への参加を宣言し、2025年までに事業の使用電力を100%再生エネルギーにする見込みだ。加えて、住宅の「ZEH(ネット・ゼロエネルギー)化」をより一層推進することで、脱炭素社会の実現を後押ししている。
一方で、住宅のZEH化などで必要な創エネルギー設備は、太陽光パネルの普及が強く推進される中で、頻発する風水災害にも耐えられるように、施工精度の確保や管理体制の強化が課題となっている。建設従事者の高齢化や新規学卒者の建設業就業数減少に伴う人材不足も顕在化しており、太陽光パネルの適切な施工を行える技術者や施工後の保守管理を行う専門人材の確保が急務とされている。
そこで、旭化成ホームズは、ボルト管理システムを開発した。ボルト管理システムは、超音波を用いた「ボルト締結判定システム」と「AI音声対話アプリ」を利用した「施工済み箇所確認判定システム」で構成される。
ボルト締結判定システムは、独自開発のシステムを組み込んだインパクトレンチ(ボルト締め器具)を活用し、インパクトレンチでボルトを締める際に発する超音波を、器具に内蔵したシステムが判定し、適正な締結音に達した時点で工具を自動停止するような設定となっている。
具体的には、締めたボルトの数と時刻に関する情報は、クラウド上に設定された顧客データベースに自動でアップロードされ、「いつ、誰が、何本のボルトを適正に締めたか」という記録を保存する。
施工済み箇所確認判定システムは、施工済みの部分を見える化するもので、ボルト締結時にアップロードされた「適正に締められたボルトの本数記録」と会話時にアップロードされた「締められたボルト箇所の記録」をエビデンスとして残せる。
例えば、太陽光パネルを載せる架台における縦一列分のボルト締めが終了した時点で、独自開発した音声認識アプリをインストールしたスマートフォンとつないだウェアラブル端末のBluetoothマイクに「締め付け完了」とユーザーが話しかけることで音声認識アプリとの会話を開始し、どの部分で何カ所のボルトを締めたかなどの問いかけに答えると、会話を通して「いつ、誰が、どこのボルトを締めたか」の情報を自動でクラウドへアップロードできる。
ボルト管理システムの運用で得られる効果は、太陽光発電システムの施工で重要なボルト締めという工程で、技能者の技術に依存しない品質の向上と熟練の建設技能者不足への対応を同時に実現するだけでなく、検査員による検査が省略されることで、人材不足を補いつつ、コスト削減を図れる。
また、これまでの施工では、ボルト締めを行う際に、仮固定、本締め、目視、ボルト、1本ごとのマーキングといった順で、同じエリアを複数回りながら施工しているが、ボルト管理システムにより、各エリアで必要な部材は全て据え付けながら一筆書きで施工することが可能なため、施工者の負担を軽減し、生産性を上げられる。
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