ダンプトラックによる建設発生土の運搬計画を最適化する新技術、清水建設:導入事例
清水建設は、量子コンピューティング技術を活用し、ダンプトラックによる建設発生土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を開発した。今後は、ドライバーへのルート通知方法などについて検討し、新技術の実用化を目指す。また、建設発生土の積載や排出場所の数がより多い現場の複雑な走行ルートでの運搬についても新技術の適用を検討し、実用化していくことで土木工事の生産性向上につなげていく。
清水建設は、土木工事の生産性向上を目的に、量子コンピューティング技術を用いて、ダンプトラックによる建設発生土の運搬計画を最適化するシミュレーション技術を構築したことを2022年1月13日に発表した。
クラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」を活用
高速道路やトンネル、ダムなど、建設発生土の搬出入量が膨大な現場では、運搬作業の効率が工事全体の進捗を大きく左右する。一例を挙げると、複数の運輸ルートがある場合、従来は2台以上のダンプトラックを使用し、各車両に異なる走行ルートを設定して建設発生土を運搬していたが、渋滞状況の変動や突発的なトラブルなどに対応することが困難だった。
上記の問題を解消するために、現場では、道路の渋滞情報などを総合的に勘案した最適なルートをダンプトラックのドライバーにリアルタイムに通知し、運搬効率を向上させる手法が求められていた。しかし、これまでのコンピュータでは、最適なルートの算出には多くの時間がかかっていた。
そこで、清水建設は、多くの情報を同時にまとめて計算できる量子コンピュータを活用することで、瞬時に最適ルートの導出を可能にする技術を開発した。
今回の技術は、量子コンピュータによる高速演算処理サービスを提供するクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」を保有するグルーヴノーツと共同開発したもので、建設発生土を現場から搬出場所まで順に搬送する複数ダンプトラックの走行ルートについて、道路の混雑具合や他車両の走行状況を踏まえ、タイムロスの最も少ない経路をリアルタイムに導き出す。
使用の手順は、まず、出発地や到着地、両地点を結ぶルート数などの前提条件をMAGELLAN BLOCKSに登録する。次に、MAGELLAN BLOCKSで、ダンプトラックに搭載されたGPSのログデータから顕著な低速走行エリアや時間帯別の滞留量などを分析し、ルートを最適化する計算モデルを構築。
続いて、この計算モデルを量子コンピュータにインプットし、ダンプトラックの位置情報や待機場所の滞留台数、地図アプリから取得した各ルートの運行所要時間などのリアルタイム情報を取り込むことで、瞬時に最適なルートを弾き出す。
清水建設は、国内の土木現場で稼働している約40台のダンプトラックと運行するデータを用いて、新技術の性能検証を行った。具体的には、現場のダンプトラックを活用し、現場内で建設発生土を積載し、外部の搬出場所に運搬する往来を繰り返した。さらに、現場と搬出場所を結ぶルートには一般道路と高速道路があったが、待機場所を経由して現場に向かうルートも設け、3つの選択肢を用意。
これらの前提条件をMAGELLAN BLOCKSに登録し、運行データを量子コンピュータに取り込んで検証した結果、運行台数を変えることなく、1日当たりの運搬量が約10%増加することを確認した。
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