清水建設らが新たな建設物流システムを開発、第1弾は19社と協力し10現場で展開:産業動向
清水建設は、都心の建築工事現場で物流を効率化するために、日立物流の協力を得て、清水建設と協力会社の物流関連コストを削減する建設物流システム「シミズ・スマート・ロジ」を開発し、2021年4月に東京支店傘下の現場で展開を開始した。第1弾は、大型現場を含む10現場と協力会社19社の参加でスタートし、徐々に対象現場と対象資材を拡大し、2年以内に清水建設東京支店での本格運用を目指す。
清水建設は、都心の建築工事現場で物流を効率化するために、日立物流の協力を得て、清水建設と協力会社の物流関連コストを削減する建設物流システム「シミズ・スマート・ロジ」を開発し、概要を2021年3月15日に発表して、同年4月に東京支店傘下の現場で展開を開始した。
10現場で協力会社19社の参加を1年間継続した場合にCO2を約60トンカット
大都市圏の建築工事現場では、資材を仮置き可能なスペースが少なく、特に仕上げ工事段階に入ると、工程を勘案しつつ建材メーカーを含む多くの協力会社から少量ずつ資材を現場に搬入する。
そして、少量での資材の受け入れは、運搬車両の積載能力を生かしきれないため、結果として生じる無駄な物流費用がコスト増の一因になっている。さらに、協力会社は、各現場の工程を優先して生産ラインを稼働させるため、稼働効率が低下する。一方、現場では、搬入資材の仮置きといった荷捌(さば)き対応に手間を要してしまう。
上記の課題を解決するために、清水建設はシミズ・スマート・ロジを開発した。シミズ・スマート・ロジの特徴は、協力会社と現場間の物流に中間物流拠点「ロジセンター」を介在させている点。その上で、現場はWebシステム上に資材のリクエスト情報(数量と納入期間)を公開し、このデータをもとに協力会社は中間物流拠点へ資材を配送し、物流拠点は現場へ資材運搬を効率的に行う。
また、協力会社では、各現場のリクエスト情報を満たせば、自社の都合で生産ラインを効率的に稼働させられ、かつ協力会社のタイミングで資材を運搬車両に満載してロジセンターに運べる。ロジセンターでは、リクエスト情報をもとに、配送車に異なる資材を満載して現場に運搬することや複数の現場に対して必要な資材を満載して搬送することが可能になり、積載容量の無駄が無くなる。
結果、清水建設の試算では、協力会社側は運搬費を約15%、製作費を約3%、現場は荷捌きに関わる労務費を約5%、それぞれ減らせる見込みだ。加えて、10現場で協力会社19社の参加を1年間継続した場合には、10トンと4トン積みトラックによる運搬を計約220回分削減でき、CO2の発生量を60トン程度カットする見通しとなっている。ロジセンターを輸入資材の一時保管場所としても活用すれば、為替レートが有利な時期にコンテナ満載で資材を輸入することに応じられる利点もある。
清水建設は、シミズ・スマート・ロジの第1弾として、日立物流が保有する守谷倉庫の一部(2300平方メートル)をロジセンターとし、日立物流と共同で運営している。守谷倉庫のロジセンターでは現在、物流コストの削減余地が大きいサッシュ、スチールドア、OAフロアなど14種を扱っている。
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