AI搭載のフォークリフトをトラックと連携する実証事業をスタート、大和ハウス工業ら:リテール&ロジスティクス
大和ハウス工業らは、物流施設の荷役や作業を効率化する共同事業として、AIを搭載した自動運転フォークリフトをトラックと連携するシステムの構築を進めている。
大和ハウス工業ら※1は、経済産業省資源エネルギー庁の公募事業「令和3年度 AI・IoTなどを活用した更なる輸送効率化推進事業※2」に、AIを搭載した自動運転フォークリフトをトラックと連携させ、物流施設の荷役や作業を効率化する共同事業を提案し採択され、2021年9月16日に交付が決定したことを同月17日に発表した。
※1 大和ハウス工業ら:大和ハウス工業、イオングローバルSCM、花王、日立物流、豊田自動織機
※2 令和3年度 AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業:新技術を用いたサプライチェーン全体の輸送効率化推進事業、トラック輸送の省エネ化推進事業およびビッグデータを活用した効率的かつ適切な自動車整備による使用過程車の省エネ性能維持推進事業で構成される
2021年度はトラック積卸し自動化技術の確立を目標に活動
国内では、運輸部門の最終エネルギー消費量※3が、産業部門に次いで多いため、サプライチェーン全体の輸送効率化と省エネ化を図ることが重要となっている。
※3 最終エネルギー消費量:実際に消費されたエネルギー量
さらに、物流業界では、トラックドライバーやフォークリフト運転者の労働力不足が深刻化しており、施設内での省人化と発着荷主間で連携した輸送の効率化が求められている。一方、施設内の輸配送では、物流施設の入荷と出荷のタイミングにトラックを連携させることで待機時間の削減といった円滑化が必要とされている。
一方、施設内の業務では、荷物のピッキングや無人搬送車(AGV)などの一部で自動化が進んでいるが、物流施設の入出荷は業務が複雑なため、大半が人力で行われている。
こういった状況の中で、経済産業省資源エネルギー庁は、サプライチェーン全体の効率化と省エネ化に取り組む実証事業の公募を行い、大和ハウス工業、イオングローバルSCM、花王、日立物流の4社による今回の共同事業を採択した。
共同事業では、大和ハウス工業らが、サプライチェーンの結節点であるトラックの積卸しを自動化するために、AIを搭載した自動運転フォークリフトの実用化を目指す。そして、荷主間の計画的かつ効果的なトラックの運行を実現することで、サプライチェーン全体の効率化と省エネ化に取り組む。
事業期間は、2021〜2023年度の複数年度で計画され、2021年度は核となるトラック積卸し自動化技術の確立を目標に活動する。2022年度は、共通システムとの連携・積卸しにスワップボディーコンテナ※4を有効活用する他、AIを備えた自動運転フォークリフトの前後工程にパレタイジングロボット※5を利用し自動化の範囲を広げることで効率化を図る。また、2023年度には、AIを搭載した自動運転フォークリフトを用いて、生産性の向上と省エネ技術が広く普及するよう実証や検討を推進する。
※4 スワップボディーコンテナ:車体と荷台が分離でき、分離中に荷役作業の実施が可能な車両
※5 パレタイジングロボット:荷積み(パレタイズ)や荷下ろし(デパレタイズ)の作業を行うロボット
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