パナソニックが提案する地震後の“通電火災”を防ぐ「感震ブレーカー」、被災後3分間は避難確保:BCP対策(2/2 ページ)
国や研究機関などで、国内では30年以内に高確率で大規模地震の発生が予測されており、そのリスクとして建物の倒壊やインフラ構造物の損傷など1次災害のみにスポットが当たることが多い。しかし、被災した後に被害を拡大させないためには、火災に代表される2次災害をいかに防ぐか、平時にどのような対策を講じておくかが重要となる。パナソニックでは、地震後に火災が発生する主要因となる“通電火災”に着目し、住宅での2次災害を未然に防ぐ「感震ブレーカー」の啓発に注力している。
夜間の地震発生でも、避難照明を確保するパナソニック製の感震ブレーカー
そもそもブレーカーとは、電気を安全に使うために電気回路で起こる異常事故から電線を守る安全装置として取り付けられる遮断機を指す。住宅向けでは主幹ブレーカーと、台所用コンセントやリビング照明などに接続する分岐ブレーカーから成る。
感震ブレーカーは分岐ブレーカーの1ユニットとして設置し、震度5以上の揺れや傾きを加速度センサーで感知するとブザー音で警告を発し、主幹漏電ブレーカーに信号を送り、強制的に電力供給をOFFにする仕組み。
パナソニック製品の独自機能としては、地震が夜間に起きても、ブレーカーをOFFにするまで、あえて3分間のタイムラグを設け、避難用の照明電力を確保。真っ暗闇で玄関がどこかわかないといったトラブルが生じない仕掛けが施されている。
また、地震発生と同時、または主幹ブレーカ―を遮断する3分未満で停電となった場合は、通常であればブレーカーがONのままのため、電気復旧時に室名が危険な状態に晒(さら)されるが、電気が復旧したときに2秒以内で主幹ブレーカーをOFFに切り替えて火災を回避する。
他社製品との差別化ポイントでは、内部コンデンサーの寿命に合わせて設置後10年でブザーによって交換時期を知らせるほか、交換時には出力線の接続コネクターでつなぐだけの通線・幹線工事不要の省施工、施行中の誤作動を防止するブレーカー本体の電源スイッチ、オプションの「お知らせユニット」で音声での報知などがある。
ラインアップは、2000年以前のパナソニック製分電盤に対応し、感震と漏電を一体化した主幹ブレーカーのみの交換で済む感震機能付き漏電ブレーカー「AB-60J型」、住宅分電盤「コンパクト21シリーズ」の分岐ブレーカーに空きスペースがあれば組み込めるコンパクト型の感震ブレーカー「BQX702」、使用している分電盤はそのままで後付けできる感震リニューアルボックス「30A用BQE3252Z」。分電盤タイプでは、標準で感震ブレーカー搭載の「地震あんしんばん」と感震に加え避雷器も備わった「地震かみなりあんしんばん」を用意している。
感震ブレーカー搭載住宅分電盤の採用事例では、1996年に建設された免震構造の無い大阪のマンションで、電力小売業も手掛けるソリューション会社との協力関係により、全戸に24台を2021年3月に納入。名古屋の集合住宅では、市の補助金制度を活用して、工事店から管理会社への積極提案が功を奏し、2021年6月に全戸に97台を設置した。
また、大阪の住宅会社リブ・ホームのケースでは、阪神・淡路大震災や東日本大震災で通電火災の怖さを目の当たりにして、防災意識が高まり、大阪府茨木市の分譲地「クッキータウン三島丘」での全戸137戸への採用が決定。その後、2018年6月の大阪府北部地震では、感震ブレーカーが正常に作動し、発火を防いだ。リブ・ホームでは、「もし、地震が暖房を多用する冬場に起こってたら大変。99戸無事でも1戸で火事があってはダメ。地震はないほうがいいけれど、今回の地震で、感震ブレーカーの重要性を再認識した」と感想を寄せたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- LED:パナソニックがアイススポーツ施設のライティングをサポート、多様な利用形態に対応する劇場空間を創出
パナソニック エレクトリックワークス社は、屋内/屋外を問わず、高度なライティング技術を多くの自治体や公共施設に提供している。青森県八戸市の「FLAT HACHINOHE」でのアリーナ照明設備もその一つだ。FLAT HACHINOHEは、近隣の小・中学生のスケート授業からプロチームのアイスホッケーまで、各種アイススポーツに利用されており、フロアを転換することで、氷上以外の多彩な催しの場ともなっている。 - LED:夜の二条城で光の饗宴、パナソニックの照明演出「アフォーダンスライティング」で幻想空間へいざなう
パナソニック エレクトリックワークス社が、施設の夜間照明やイベント照明で提案するパナソニック製LED投光器を活用した照明演出「アフォーダンスライティング」に、新たな手法として人の行き先を光で示す「誘導」が加わった。京都・二条城で催されている「光と食」の夜会に試験導入されたことに合わせ、現地見学会で光の演出が人の行動にどう影響するのか、その有用性を体験してきた。 - プロジェクト:三井不動産、パナ工場跡地「門真市松生町商業施設計画」着工
三井不動産は、大阪府門真市松生町のパナソニック工場跡地における、商業施設、分譲マンションなどからなる大規模複合街づくり型開発事業の商業施設街区「(仮称)門真市松生町商業施設計画」の起工式を行った。商業施設は2023年春に開業予定だ。 - ニューノーマルを勝ち抜く事業戦略:2030年度に売上高5500億円を目指す、パナソニック ハウジングシステム事業部の3つの成長軸
住宅だけでなく、最近は非住宅の領域でも、外装材や建具などの建材を市場に供給しているパナソニック ハウジングシステム事業部は、2022年に事業会社化するのに伴い、2030年度に売上高5500億円を目指す、3つの軸から成る新たな戦略を打ち出した。 - A-Styleフォーラム Vol.8:Microsoftが提言するニューノーマル時代のクラウド化メリット、「目からウロコ!これからのクラウド活用術」<前編>
2021年10月1日、住宅用3DCADメーカー福井コンピュータアーキテクトは、Webセミナーイベント「A-Styleフォーラム Vol.8」を開催した。建築分野におけるクラウド活用をメインテーマに、日本マイクロソフトによる基調講演をはじめ、指定確認検査機関の建築確認申請電子化の解説、実力派設計コンサルによる設計効率化テクニックの紹介など、多彩かつ充実した3時間となった。前・中・後編と3回に分けてお送りするうち、前編の今回はオープニングセッションと日本マイクロソフトの基調講演を中心にレポートする。 - 産業動向:災害時に病院の機能継続をサポートするシステムの開発に着手、戸田建設ら
戸田建設は、バニーホップとともに、病院の機能継続サポートシステム「ききみエール」の開発に着手した。ききみエールは、地震などの自然災害で、病院が事業を継続することが難しい際に、インフラや施設への被害状況、エレベーターの運行制限といった情報を院内スタッフが保有するスマートフォンに共有するもの。今回のシステムは2021年度中の開発完了を目指している。完成後は、新築病院での導入を行い、病院に限らず、BCP対応が重要な教育施設や事務所ビルなど他用途の建物に対しても導入を進めていく予定だ。