三井住友建設らが高耐久床版を採用した床版取替工事を完了、非鉄製床版を実用化:導入事例
NEXCO西日本と三井住友建設は、E2A中国自動車道「蓼野(たでの)第二橋下り線」の床版取替工事に高耐久床版「Dura-Slab」を適用した。なお、並行して開発した箱桁構造の高耐久橋梁「Dura-Bridge」、プレキャスト製の高耐久壁高欄「Dura-Barrier」は2020年に完成したE32徳島自動車道「別埜谷橋」で運用している。
NEXCO西日本と三井住友建設は、鉄筋やPC鋼材の代替品として、腐食しない新材料を緊張材に用いた高耐久床版「Dura-Slab」を高速道路橋に初めて採用したE2A中国自動車道「蓼野(たでの)第二橋下り線」の床版取替工事が完了したことを2021年11月25日に発表した。
床版厚を通常のプレキャスト床版より約2割薄くできる
高速道路橋は、経過年数に伴う老朽化だけでなく、交通量と車両総重量の増加、凍結防止剤の散布や沿岸部での塩害などにより劣化が進行している。そこで、両社は、高速道路リニューアルプロジェクトにおける鉄筋コンクリート床版の取替工事で適用を目指し、鉄筋やPC鋼材などの鋼材を一切用いないDura-Slabの開発を推進してきた。
その後、輪荷重走行試験や要素試験により十分な耐力を有していることを確認し、実証橋建設により施工性や全体安全性などの確認を行うことで、蓼野第二橋下り線への初採用に至った。
Dura-Slabは、設計基準強度が1平方ミリ当たり80ニュートンの高強度繊維補強コンクリートを使用することで鉄筋を不要とし、PC鋼材の代わりにアラミドFRPロッドを使用してプレストレスを導入し腐食劣化しにくくした。
Dura-Slabで採用したプレキャスト床版の構造は、橋軸直角方向に対して水平リブを備え、アラミドFRPロッドによりプレストレスを導入している他、床版厚を一般的なプレキャスト床版より約2割薄くできる。
加えて、鋼材腐食に起因するコンクリート片の剥落による第三者被害が発生しにくく、軽量化により耐震性も向上しているため、維持管理の人とコストを減らせる。腐食劣化因子の排除により高耐久化・長寿命化を実現し、補修・補強や更新工事も抑えられ、ライフサイクルにおける地球温暖化ガスの排出量を低減する。
また、通常のプレキャストPC床版は、500ミリ程度の現場打ち間詰め部を設け、そこにループ形状の鉄筋などを配置しコンクリートを打設することで一体化されているが、Dura-Slabの床版構造は間詰め部を約30ミリと小さくした上で、アラミドFRPロッドで橋軸方向にプレストレスを導入することにより連結するため、間詰め部の耐久性がアップしている。さらに、床版上面からの漏水に対する耐久性を上げる目的で、スタッド部も含め、床版上面には孔を一切設けない。
今回の適用場所は、E2A中国自動車道の「六日市インターチェンジ(IC)」〜「鹿野IC」間の蓼野第二橋下り線で、橋長103メートルの全床版がリニューアルされた。今後、両社は、飛来塩分や凍結防止剤散布により鋼材が腐食しやすい環境に設置された高速道路橋を対象にDura-Slabを展開する予定だ。
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