三井住友建設が高圧線下での床版取替工事を可能にする床版架設機を開発:製品動向
三井住友建設は、橋梁(きょうりょう)の床版取替工事で、高圧線下など特殊な施工条件でも効率的な作業が行える床版架設機を開発し、2018年3月7日に着手した「東名高速道路(特定更新)裾野インターチェンジ(IC)〜沼津IC間床版取替工事」の一部で初適用した。
三井住友建設は、橋梁(きょうりょう)の床版取替工事で、通常のトラッククレーン施工が困難な環境でも、作業が可能な床版架設機を開発したことを2020年12月24日に発表した。
クレーン申請と完成検査が不要
新型の床版架設機は、脚自体が伸縮して床版を上下させる「門型油圧リフター」と、床版上の横梁(よこはり)に固定された走行レールに沿って移動する「搬送装置」で構成されている。搬送装置は、床版を平面的に回転させる機能を搭載しており、施工時における床版の吊上げや搬送、設置の作業を遠隔操作で行える。トラッククレーン施工では吊上げと設置の際に、床版を固定する補助作業員が必要だが、新型機ではその作業が不要なため安全性向上と省力化・省人化を図れる。
また、トラッククレーンと比べて総重量が軽いため、新型機の搬入、組み立て、解体では、大型の重機が要らず、施工時に既設の鋼桁に与える負担を小さくできる。
門型油圧リフターは、稼働させることで床版を上下に揚重することから、一般的な橋形クレーン形式の床版架設機を取り付ける際に求められるクレーン申請と完成検査が不要で、架設機の組み立てから使用までの期間を短縮する。作業休止時は門型油圧リフターを縮めて高さを低く抑えることで、高さ調整が難しい橋形クレーン形式の床版架設機に比べて、隣接する供用線への影響も減らせる。
さらに、門型油圧リフターの横幅や基数を変更することで、1サイクルで取替する床版枚数を現場条件に合わせて設定でき、1車線ごとに床版取替する場合の半断面施工にも応じられる。
三井住友建設は、既に、静岡県で2018年3月7日〜2023年8月1日まで手掛ける「東名高速道路(特定更新)裾野インターチェンジ(IC)〜沼津IC間床版取替工事」の一部で新型の床版架設機を初適用している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 三井住友建設がループ鉄筋と補強鉄筋が不要なPCa床版の接合工法を開発
三井住友建設は、鋼繊維を混入した超高強度のサスティンクリート「超高強度繊維補強サスティンクリート」により、従来工法で必要だったループ鉄筋と補強鉄筋を不要にするプレキャスト(PCa)床版の接合工法「サスティンジョイント」を開発した。今後、老朽化した高速道路橋などの床版取替工事で、サスティンジョイントの本番適用を目指し展開していく。 - 熊谷組が東北自動車道の床版取替工事に「コッター床版工法」を導入
熊谷組は、コッター式継手を利用してプレキャスト床版を接合する「コッター床版工法」の実工事への導入を進めている。このほど、東北自動車道の床版取替工事に床版工法を採用したことを発表した。今後、コッター床版工法を高速道路のリニューアルプロジェクトを中心に適用しつつ、工法の改良を推進していく。 - 橋梁の床版取替工事で、構造寸法図の作成時間を3分の1に短縮するプログラム
三井住友建設は、橋梁の床版取替工事で、構造寸法図の作成時間を短縮するプログラム「SMC-Slab」を開発した。今後、同社が進めるトータル建設マネジメントシステム(DCM)の一環としてSMC-Slabを活用し、橋の大規模更新事業でi-Constructionを推進していく。 - 鋼橋の床版取替工事で交通規制期間を65%に短縮する新工法
大林組ら3者は、道路橋の床版取替工事で、合成桁の床版撤去を工期短縮と安全性を確保して、工事中の交通規制を行う期間を短縮する新工法を開発した。 - 防水工不要の100年もつプレキャストPC床版、高速リニューアル工事の工期を短縮
大林組は、高速道路リニューアル工事で工程短縮と耐久性向上を実現する防水機能を持ったプレキャストPC床版を開発した。既に構造検討や性能確認実験、輪荷重走行試験を経て、実橋へ適用するのに十分な防水性能や強度などが確認されている。 - 鹿島建設らがUHPFRCによる道路橋床版のリニューアル工法を開発、橋梁下部工の補強が不要
鹿島建設と中日本高速道路は、鋼繊維を多量に混入した「超高性能繊維補強セメント系の複合材料」を現場で製造・打設して、床版の補強と補修を行い、薄層でありながら、高耐久な床版を構築する工法を開発した。使用するUHPFRCは高強度であるため、新工法は、コンクリート床版・鋼床版のどちらのリニューアルにおいても、床版増厚の量を最小限に抑えられる。そのため、道路橋床版自体の重量を減らすことができ、橋梁下部工の補強が不要となる。