大林組、工事渋滞を抑制する床版取替工法「DAYFREE」:新工法
大林組は中日本高速道路と共同で、床版取替工事の施工ステップを分割し、交通量が少ない夜間の車線規制のみで工事が可能な新工法「DAYFREE」を開発した。
大林組は2020年6月17日、中日本高速道路と共同で、交通量の少ない夜間の車線規制のみで工事が可能な床版取替工法「DAYFREE」を開発したと発表した。本工法により、橋梁リニューアル工事での工事渋滞が抑制が可能となる。中日本高速道路発注の中央自動車道・弓振川橋(上り線)の床版取替工事において本工法を初採用した。
DAYFREEは、トレーラーで運搬できる半断面用の移動式床版架設機「ハイウェイストライダー」やプレキャスト板を床版同士の接合部に設置する「スリムNEOプレート」(いずれも大林組開発)を活用し、限られた時間内で既設床版の撤去から新たな床版の架設、路面復旧を行う新工法。夜間のみの交通規制で施工できるため、交通量の多い都市部での工事でも渋滞の発生を抑制できる。
DAYFREEによる施工の進め方は次の通り。まず交通量の少ない夜間に1車線だけ規制し、既設床版を撤去。仮設床版を設置して交通開放する。翌日以降の夜間に鋼桁上面の研掃作業や設置した仮設床版の撤去、新しいプレキャストPC床版の架設を順次実施する。
これらの工程を1サイクルとして繰り返し、床版取替工事を完成させる。1サイクルの間でも、昼間は仮設床版を設置し交通開放しているため、車両は問題なく通行できる。
1車線規制のみでの床版撤去や架設を可能にするのが、新たに開発した半断面専用の移動式床版架設機(ハイウェイストライダー)。支柱が鉛直・水平方向に伸縮可能な門型クレーンで、半断面に収まらない大型クレーンとは異なり、トレーラーで架設地点に搬入後、支柱を伸ばすことで半断面に収まるように自動かつ短時間で設置でき、撤去時も支柱を収縮すればトレーラーで速やかに異動できる。
昼間に交通規制を開放するためには、架設した床版同士間の接合部に所定の強度が必要となる。この課題を解決すべく新たに開発したのが、常温硬化型超高強度繊維補強コンクリートのスリムクリートを使用し、工場製作したプレキャスト板を床版の接合部に設置するスリムNEOプレートだ。
スリムNEOプレートは非常に高い強度を有するため、設置後は速やかに防水・舗装工事に移行できる。プレート下面の空隙は、道路を共用しながらでも床版下面からスリムクリートで充てんできるため、長期にわたり品質と耐久性を確保できる。
高速道路の橋梁リニューアル工事では、工事完了まで上下線のいずれかを交通規制する必要がある。仮橋による迂回路を設置して車線数を確保すれば工事渋滞をある程度回避できるが、都市部ではそもそも迂回路用の土地の確保が困難なことから現実的ではなかった。このような課題を受けて、大林組による今回の開発・施工が進められた。
今後はDAYFREEや各技術を床版取替工事に適用することで、高速道路のリニューアル工事に伴う交通規制期間や回数を減らすとともに、交通インフラの長寿命化に貢献していく。
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