住友林業の「木質ハイブリッド集成材有孔梁」が1時間耐火構造の大臣認定取得:CLT
日本集成材工業協同組合(日集協)と住友林業は、木質ハイブリッド集成材有孔梁(ばり)で、1時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得した。
日本集成材工業協同組合(日集協)と住友林業は、木質ハイブリッド集成材有孔梁(ばり)で、1時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得したことを2021年10月22日に公表した。
今回の認定は、日集協が大臣認定を取得している木質ハイブリッド集成材の1時間耐火認定梁(はり)に、住友林業が開発した梁貫通技術を加えて新規で受けた。設備配管を貫通できるので、従来の木質ハイブリッド集成材梁と比べ天井高を確保でき、設計の自由度が向上し、デザイン上の制約が少なくなるので意匠性がアップする。また、設備配管用の嵩上げ材を設置する必要も無くなり、建築費全体のコストダウンと汎用性の拡大にもつながる。
1時間耐火木質ハイブリッド集成材有孔梁
日集協の従来の木質ハイブリッド集成材は、鉄骨造でありながら、集成材を耐火被覆して木質感ある仕上げにするのが特徴で、2005年に大臣認定を取得している。この部材の普及で都市部等の防火地域で3、4階建てオフィスビルや庁舎、学校、共同住宅などに木質感あふれる空間を造れるようになった。見た目は木質だが、構造計算は鉄骨と同様なので、鉄骨の構造計算に慣れている人にとっては扱いやすい木質耐火部材となっている。
しかし、従来の木質ハイブリッド集成材は、梁に設備配管用の貫通孔を開けられない大臣認定仕様だった。配管などの設置には、配管用のスペースを別途設ける必要があり、天井高に制限をうけることや追加コストが必要になるなどの問題があった。
新規認定の部材は、住友林業の梁貫通孔内部を耐火被覆する技術により、梁に設備配管を貫通することができる。また、貫通孔内部に不燃材を格納しており、外側から見えないので意匠性が高まります。
今回取得した認定は、梁の高さ(梁せい)が250〜488ミリで、488ミリを超えるサイズも2022年の大臣認定の取得を目指している。
日集協は、国内の主要集成材メーカーからなる団体で、組合員は住宅から大規模建築物まで高品質の構造用集成材を供給している。組合員10社(施工部会)は1時間耐火の鉄骨内蔵型木質ハイブリッド集成材の製造をはじめ、その他の1時間、2時間、3時間の耐火の各種木質部材の製造にも取り組んでいる。
住友林業は、今回の部材以外にも、1時間、2時間、3時間の耐火構造の柱梁木質部材で大臣認定を取得しているため、規模にかかわらず全ての建物で耐火要件を満たした木造化・木質化が可能。
脱炭素社会実現に向け、躯体部分の資材製造時のCO2排出量が他の構造と比べ少なくなる木造建築が注目を集めるなか、住友林業は木造超高層建築物を象徴とし、街を森にかえる「環境木化都市」の実現を目指す研究技術開発構想「W350計画」を推進している。今回の耐火部材の研究を含め、木の価値を高める研究開発を加速していく。
木質ハイブリッド集成材の実例としては、フレーバーライフ社本社ビルや城南信用金庫高円寺支店などを複数手掛けてきた。住友林業では、その経験を生かしながら、本部材や木質耐火部材(木ぐるみCT、木ぐるみFR)を用いて、木造、鉄骨造に関わらず、さまざまな木質化の需要に広く対応することができるとしている。
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