1200m3の木材を活用したホテルが札幌市で開業、全体の約80%に北海道産材を利用:非住宅 木造建築フェア
三菱地所は、ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツとともに、北海道札幌市中央区で開発を進めていたホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」が2021年8月に竣工したことを発表した。
三菱地所は、木造の設計・施工や修繕、管理に役立つソリューションが一堂に介する専門展「非住宅 木造建築フェア」(会期:2021年10月7〜8日、東京ビッグサイト青海展示棟)に出展した。会場では、同社と三菱地所グループのロイヤルパークホテルズアンドリゾーツが2021年10月1日に北海道札幌市中央区で開業したホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」の概要をパネルで紹介した。
9階〜塔屋1階は木造フロア
ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園では、「北海道を体感する」をコンセプトに、建物の内装材や外装材、構造材に北海道産の木材を利用した。内装材には、かつてタモの原生林が存在した札幌市の風景を表現するため、タモ材を使用し、外装材には、1897年に開始したカラマツ造林で北海道を代表する樹木となったカラマツ材を採用した。構造材には、北海道の固有種で、高強度かつ軽量であるトドマツを用いた。
三菱地所の担当者は、「今回の施設で活用された木材は合計で約1200立方メートルに上り、全体の約80%に北海道産材を活用している。内訳は、床の構造材に約473立方メートルのCLT材を使用し、壁の構造材に約280立方メートルの製材と約309立方メートルの集成材を利用して、配筋付製材型枠“MIデッキ”に約16立方メートルの製材を用いた。MIデッキは、三菱地所とケンテックが共同開発したもので、製材木板に鉄筋を配筋したコンクリート打設用の型枠だ。特徴は、通常廃材となる型枠材をそのまま天井の仕上げ材として利用した点で、施工負担の軽減に役立つ」と話す。
上記の取り組みにより、木材が成長する過程で吸収した610トンのCO2を建材に固定するとともに、ホテル全体をRC造とした場合と比較して約1383トンのCO2発生を抑制している。
建物は、地下1階/地上11階/塔屋1階建てで、地下1階〜地上8階はRC造(8階の一部床はCLT)となり、9階〜塔屋1階は木造。1階には、エントランスとレストラン「HOKKAIDO CUISINE KAMUY」を配置し、設置した木の階段には北海道産のタモ材を採用して、エントランスの風除室には北海道産カラマツの端材を用いた外装木ルーバーを配した。HOKKAIDO CUISINE KAMUYでは、北海道産の食材を用いた料理を楽しめる。
2階には、宿泊者でなくてもコワーキングスペースや食事をとる場所として使えるキャンバスラウンジ「KOKAGE」を設置している。KOKAGEでは、北海道産の木材を旭川市で加工した家具を完備し、外装材には北海道産カラマツの端材を利用した外装木ルーバーを採用した。併設されたバーでは北海道産の名酒やオリジナルカクテルを提供している。
3〜11階は客室フロアで、外装材に耐候性の高いサーモウッドの木と外装用炭化コルクパネルを用いており経年変化で色が変わるようにし、3〜6階には天井の仕上げ材にMIデッキを使用している。8階では、三菱地所が保有する国土交通大臣認定の工法を活用し、CLT床とRC造を組み合わせ1時間耐火構造を確保した。
9〜11階では、柱梁(はり)型が出ない木造階の構造を生かし、キャビンをイメージしたデザインとして、木の質感と香りを感じられるように仕上げた。さらに、強化せっこうボード2枚貼りの耐火被覆で、1時間耐火構造を構築し、高耐力枠組壁工法により高耐力木構造の壁を設けた。
屋上では、通常設置する設備機器を地下に配置することで、配置された椅子に座りながら周囲にある「大通公園」やテレビ塔を眺められる環境を構築した。
「今後も、当社では、ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツと共同で、地産材を活用したホテルを開発していき、地域貢献や環境負荷軽減を推進していく方針だ」(三菱地所の担当者)。
ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園の概要
ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園は、地下1階/地上11階/塔屋1階建てで、延べ床面積は6157.60平方メートル。所在地は札幌市中央区大通西1丁目12番地で、敷地面積は695.51平方メートル。総客室数は134室。アクセスはJR「札幌」駅から徒歩約15分。設計は三菱地所設計が、施工は清水建設が、それぞれ担当し、2020年3月に着工し、2021年8月に竣工した。
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