【新連載】「センサー技術」の進化と建設テックへの道のり:建設業務でも活躍の場を広げるようになったスマホ:建設現場を“可視化”する「センサー技術」の進化と建設テックへの道のり(1)(2/2 ページ)
本連載では、日立ソリューションズの建設ICTエバンジェリストが、建設業界でのセンサー技術の可能性について、各回で技術テーマを設定して、建設テック(ConTech)実現までの道のりを分かりやすく解説していきます。初回の第1回は、いまや日常生活でも手放せなくなった「スマートフォン」の建設業務での利活用とさらなる用途の広がりについて紹介します。
最新iPhone搭載の「UWB」活用で工具の紛失防止に
LiDARセンサーは、主に顔認証で顔の形状を立体的に認識して、顔認証の精度を高めるのに利用されていますが、“AR”にも活用されています。通常のカメラよりも正確に周囲の3次元情報を把握できるので、仮想空間内での物体配置が精度高くできるのです。
ARは建設現場での利用が増えてきており、地下埋設物を表示して掘削領域を確認したり、建物の完成図をAR上で表示して施主と確認したりするなどの用途で使われています。ちなみにLiDARセンサーは、iOSを搭載しているiPhoneだけでなく、Android OSのスマホにも搭載されているモデルが増えていますので、そのうち当たり前のカメラセンサーになるかもしれません。
これもiPhoneの話になってしまいますが、最新のiPhoneには、「UWB(Ultra Wide Band)」という無線通信規格に対応したチップが取り付けられています。UWBは高精度な測位・測距に適しており、UWBが搭載されるまではスマホの電波を利用したBluetoothやWi-Fiを利用することがほとんどでした。しかし、BluetoothやWi-Fiでは、それほど精度が出ないため、エリア内でおおよその情報しか取得できません。それに対し、UWBを用いた場合は、10センチレベルの測距が可能なため、細かい動きまで捉えることができるのです。
iPhoneを提供しているAppleは、UWBの技術を利用した「AirTag」というタグを2021年4月に発売しており、AirTagを取り付けた持ち物をiPhoneを使ってピンポイントに発見でき、紛失防止や探索に大きな威力を発揮します。そのため、今後は建設現場での備品管理にも応用できるのではと期待されているのです。
その他に、スマホには「加速度センサー」「ジャイロセンサー」「磁気センサー」などが搭載されています。これらはスマホの細かい動きを検出できるため、スマートフォンを持っている作業者の状態を常に把握して管理することが可能になります。例えば、加速度センサーを利用して、落下や転倒を検知して、即時対応を行うなどの現場の安全管理面での応用が考えられます。
今後、さまざまなセンサーのさらなる小型化や高精度化が進み、スマートフォンへの搭載がなされるでしょう。高速・低遅延・大容量通信が実現する“5G”の普及も進むことで、スマホのさらなる現場活用が期待されます。
次回は、土木分野で重要な測量・計測作業を支える「位置検出技術」に関する知識を織り交ぜながら、現場で働くセンサーを取り上げていきます。それでは、次回またお会いしましょう。
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