清水建設が全社統一のサーバ型RPAを導入、間接業務を15%自動化:導入事例
清水建設はこれまで部門ごとにバラバラに運用されていたRPAを一元化すべく、グループ全体で統一したサーバ型RPAを導入することを決めた。併せて、開発プロセスや運用ルールも標準化することで、間接業務を15%自動化させることを目指す。
清水建設は2020年12月、デジタル戦略の一環として、日立ソリューションズの協力を得てグループ共通のRPA運用ルールを策定するとともに、米Automation Anywhereのサーバ型RPA「オートメーション・エニウェア」を国内外の各部門及びグループ会社に、全面的に導入することを公表した。2020年度内をめどに、社内で稼働するRPAを新たなサーバ型RPAに統一し、海外拠点やグループ会社に対しても運用支援を行い、グループ全体で業務のRPA化を促進する。
サーバ型RPAで利用状況や開発状況、運用スケジュールなどを可視化
清水建設は現在、デジタルゼネコンのフロントランナーを目指し、「日常業務のデジタル化」「ものづくりのデジタル化」「提供する施設・サービスのデジタル化」を3本の柱としたデジタル戦略を推進している。その中で内外勤を問わず、日常業務を効率化する核となる施策が、RPA化と見なしている。
これまで同社内では、部門ごとに業務のRPA化を進め、100体以上のロボットを導入。RPA化による業務効率の一層の向上を目的に、2019年11月に開催した全社内勤スタッフ向けイベント「イノベーションセミナー」などを通じ、RPAの優れた活用事例を水平展開してきた。
一方で、複数ベンダーのRPAが導入された結果、ロボット開発のノウハウの分散、情報セキュリティリスクの顕在化、RPA化のコスト管理など、部門ごとの業務のRPA化に伴う課題も明らかになったという。
課題を解決すべく、国内外の全部門及びグループ会社が共通して運用できるRPA導入のため、検討を重ね、全社でのロボットの利用状況や開発状況、運用スケジュールなどを可視化できるようにサーバ型RPAの導入を決定した。
併せて、開発プロセスや運用ルールを標準化するとともに、開発済みロボティクス及び開発時FAQの共有、部品の共通化といった導入前の環境整備にも取り組んできた。今回のRPA化により、繰返し行う単純作業やデータ作成・集計作業など、間接業務の15%を自動化させる。
また、RPAの効率的な管理のため、デジタル戦略推進室内に「RPA推進チーム」を設置。RPAのユーザーとなる部門がワークフローで利用申請することで、デジタル戦略推進室が全ユーザーの開発プロセスから利用状況に至るまで管理できる体制を整えている。ユーザーは、社内RPAの専用Webページにアクセスし、他部門で作成した利用可能なロボット、開発時のFAQや運用ルールなどを共有することもできるという。
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