竹中と鹿島が共同開発、大阪から名古屋のタワークレーンを遠隔操縦: スマートコンストラクション
竹中工務店と鹿島建設は、アクティオ、カナモトと共同で、遠隔でタワークレーンを操作する「TawaRemo」を開発した。実証実験では、大阪に設置した地上の専用コックピットから、名古屋の大型タワークレーンを操作し、材料移動、積み込み、積み下ろしなどの遠隔操作が可能なことを確認した。
竹中工務店と鹿島建設は、両社が進めている技術連携のうち「遠隔操縦システム」として、タワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo」を開発した。
ワークレーンの振動や揺れも遠隔で再現
新システムでは、タワークレーンの運転席回りに設置した複数台のカメラ映像が、通信基地局を経由して、地上または遠隔地にあるコックピットへ送信され、モニターに映し出される。
オペレーターのコックピットには、荷重などの動作信号や異常信号を表示する専用モニターを配置している他、タワークレーン側に設置されたジャイロセンサーで、タワークレーンの振動や揺れを体感することもでき、タワークレーンの運転席上と同等の環境が構築されている。
遠隔の操縦席とタワークレーンを結ぶ通信は、NTTドコモの協力のもと、高セキュリティの4Gアクセスプレミアム回線(閉域ネットワーク)で、タワークレーンと基地局をつなぐ。今後は、操作性の向上を目指し、5G回線の活用も検討していくという。また、コックピットと4G/5G基地局の通信手段は、カナモトが開発したセキュリティ強化と低遅延での操作を可能にする通信システム「KCL」(Kanamoto Creative Line)を使用する。
4社は、2019年9月から実機での検証を開始し、通信環境、コックピットの仕様変更など、改良改善を重ねてきた。2020年1月には、実証実験で通常の材料の積み込み、積み下ろし作業を遠隔で問題なく行えることが確認されている。
開発の背景には、クレーンオペレーターの身体的負担を減らし、作業環境の改善が必要とされていたことがある。通常タワークレーンのオペレータは、タワークレーン頂部に設置された運転席まで最大約50メートルを梯子(はしご)を使って昇降している。一度、席に着くと作業開始から終了までは、高所の運転席に1日中拘束されてしまう。
新たに開発したタワークレーン遠隔操作システムは、地上にコックピットを配置すれば、作業事務所や遠隔地のコントロールセンターなどで、場所を限定せずにタワークレーンの操作が行えるようになる。また、同一箇所に複数のコックピットを配置できるため、多数の若手オペレータに対し、熟練オペレータが1人付いて指導教育も行えるため、技術伝承と若手の技量向上につながる。
計画では、2020年9月までに両社の作業所で諸官庁との協議を進めつつ、試験運用を繰り返し、コックピットの増産及びタワークレーンへのシステム搭載を進め、2020年度中には本格的な運用を目指す。
併せて、アクティオは、自社保有のタワークレーンへシステムを順次導入し、カナモトは、コックピットと通信システムのレンタル運用保守を担当することになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 搭乗時の6割の作業効率しかない建機の遠隔操作に“5G”は何をもたらすか
土木研究所では2016年度から、災害発生時に建設機械を遠隔で操作するロボット技術の研究に取り組んでいる。ロボット技術は、現段階で利用可能なレベルに達し、災害復旧の現場で実際に適用はされているが、人が搭乗して操作するのに比べると劣る効率性や限られた情報だけを頼りにした操縦方法の不安定さなど、改善すべき課題は多い。 - 映像でクレーンの接触事故を防ぐシステム、画像認識を活用
東洋建設はクレーンによるつり荷作業の安全性を高めるシステムを開発。クレーンのブーム先端に設置するカメラの映像から画像認識で作業員を検出して警報を出すことで、接触事故などの防止に役立てるという。 - ジャイロ効果でクレーン作業を効率化、鉄骨の設置時間が3分の1に
戸田建設はタワークレーンを利用した揚重作業を効率化する、吊荷(つりに)旋回制御装置を開発した。高速回転するフライホイールのジャイロ効果を利用し、吊荷を目的の位置で正確に静止させたり、風などの抵抗を受けても姿勢を一定に保ったりできる。 - ダム工事でコンクリのクレーン搬送を自動化、ティーチングプレーバックを採用
大林組と北川鉄工所は、ダム建設工事で大型のタワークレーンを使ってコンクリートを自動運搬するシステムを共同開発した。