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「縦割りの業界を横断して施工ロボットを開発」、鹿島と竹中工務店がゼネコン初の技術連携建設業におけるDX推進の起点となり得るか?(1/2 ページ)

国内の建設業界で、なかなかデジタル変革が進まないのは、受注依存の一品毎生産かつ現地屋外生産に要因があると、度々指摘されている。では、製造業とは全く異なるビジネスモデルの建設業で、DXを浸透させるにはどうすべきか?一つの答えが、長らく5大スーパーゼネコンを中心に縦割りで内向きにしか進化ができなかった壁を打破し、業界が一致団結して横に連携することにある。実現すれば、新技術の標準化や業界構造も含めた全体最適化も見込めるはずだ。その第一歩となるゼネコン連携が、鹿島建設と竹中工務店の間で交わされた。

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 鹿島建設と竹中工務店は2020年1月30日、東京都内で会見を開き、ロボット施工やIoT領域で協調して技術開発を進めるべく、基本合意書を取り交わしたことを発表した。今後は、これまで各社独自に行っていた新たなテクノロジー開発を、知見を有するITベンダーや他のゼネコンにも協力を呼びかけ、業界全体の生産性向上、さらには建設現場の魅力アップにつなげる。

施工ロボットの開発で、建設現場の魅力を上げる


連携の概要。左が鹿島建設 常務執行役員 建築管理本部 副本部長 伊藤仁氏、右が竹中工務店 執行役員 技術本部長 村上陸太氏

 会見で、竹中工務店 執行役員 技術本部長 村上陸太氏は、「建設業界では一品生産のハードルがあり、ICTの導入がなかなか浸透していない。だが、Society5.0時代に直面している今こそ、DX(Digital transformation)で業務改善をしていかねばならない」と提言した。


竹中工務店 執行役員 技術本部長 村上陸太氏

 しかし、「デジタル変革は、今まで経験してきた技術革新とは、とくにスピード感が異なるため、各社バラバラに自分たちだけで取り組むのではなく、業界全体で事にあたることが重要。他のゼネコンをはじめ、IoTやロボティクスでノウハウを持つスタートアップや海外の企業との協力関係も構築していく必要がある。今回の発表で、我々自身が変わろうとしている意志を明確に示し、これに賛同する会社があれば広く受け入れたい」と連携の意義を強調した。

 同席した鹿島建設 常務執行役員 建築管理本部 副本部長 伊藤仁氏は、「日本の大手ゼネコンは、技術研究所を有しているが、これは世界的にも稀なこと。これまでに、それぞれの研究所などで、およそ150種類以上のロボットが作られたと言われているが、現在まで実用機として残っているものは無い。ゼネコン各社が、オリジナルの技術を囲い込もうとしたため普及の阻害原因となった。施工ロボットは、実業務では協力会社が使用するため、業界共通の仕様や操作方法を共有する目的でも、他社と連携するべきだと思い至った」と話す。

 そもそものきっかけは、「2018年10月に開催された“Archi Future”で行われた大手5社のロボット・IoT担当者とのディスカッション。その場では、『総論賛成、各論反対』で終わったが、その前からともに共同開発していた竹中工務店とは意見が一致し、今回の連携締結に至った。建設業は、製造業とは違い生産設備が無いため、人が財産。(ロボットテクノロジーによって)担い手確保や働き方改革を具現化させ、誰もがここで働きたいと思える魅力ある職場を創出していきたい」と展望を示した。

 両社の連携では、間を取り持つ「建設RX(Robotics Transformation)プロジェクト」チームを立ち上げ、既に実用化している鹿島建設の溶接ロボット「石松」や竹中工務店の清掃ロボット「AXキュイーン」などを互いに活用する他、培ってきたノウハウを持ち寄って、相互利用することで開発スピードを速め、類似のロボット研究を重複して行っていたコストの無駄も削減する。


溶接ロボット「石松」
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