大林組のBIMと連携した次世代の施工管理「プロミエ」、出来高算出などで2割の時間削減:BIM
大林組は、次世代の施工管理プラットフォームと位置付けるBIMと連携したビジュアル工程管理システム「プロミエ」を開発した。
大林組は2021年7月20日、BIMモデルを活用して鉄骨工事や躯体工事などの進捗を視覚的に把握し、リアルタイムで管理可能なWebアプリケーションとして、ビジュアル工程管理システム「プロミエ」を開発したと発表した。プロミエは、Project Management in Integrated Environmentの略で、「プロジェクトが見える」という意味が込められている。
工事出来高算出や請求処理の手間を大幅低減
従来、鉄骨など部材の工場出荷や現場搬入の際には、出荷伝票の部材リストと図面を突き合わせて管理するのが一般的だった。また、部材の取り付けや建方の完了時には、図面の部材箇所に色を塗って、進捗状況の把握や共有を行っていた。しかし、こうした作業は、部材数が多く手間がかかるので、出荷の遅れや部材符号などの記載ミス、情報伝達の漏れが起きていた。また、アナログ手法のため管理情報の共有も難しく、工事出来高の算出を行う場合に、工事の実施記録を表計算ソフトやデータシートへ転記し、その後に計算するなど非効率だった。
今回、開発したプロミエは、鉄骨などの各建設部材の作業工程などを管理するためのアプリ。大林組では2018年から現場へ試験導入し、課題や現場の要望をもとに機能を改善した。クラウドを介したBIMモデルとも連携しているため、対象工事の進捗状況を3Dモデルで視覚的に確認して、発注者や協力会社などの関係者間でリアルタイムに情報を共有することが可能となる。さらにBIMモデルが持つ部材の体積や重さなどの属性情報を活用すれば、システムに入力された施工実施記録から工事出来高の算出が容易になり、これまで業務で生じていた手間やヒューマンエラーが低減する。
システム上では、「出荷」「搬入」「建方」などの工程ごとに予定日と実施日を一元管理。日にちの入力は3D画面や部材一覧から入力対象部材を選択して記録するほか、部材の搬入や建方などの実施日は、タブレットなどの端末に付属したカメラで建設部材に貼付されたQRコードを読み取るだけで入力完了。入力した記録は、即座にシステムのサーバにアップロードされるため、関係者間でリアルタイムに共有できる。
属性情報や建方実施状況確認のメニューでは、タイムライン表示により工事予定や実施状況の進捗が時系列で確認でき、工程の遅延や前倒しは色別で表示されるため、遅延している部材の位置関係が瞬時に分かり、速やかに対策を立てられる。
また、システムでは、記録された実施情報のCSVファイル出力にも対応しているため、BIMモデルの持つ数量情報(重量、面積、体積など)と連携し、月ごとの工事出来高の数量を容易に把握。BIMモデルの数量は、図面から算出した数量と比較してもおおむね近似の値で、工事費用請求における根拠数量として利用できるため、工事出来高算出と請求処理にかかる時間が大幅に低減される。試行現場では、約20%の時間を削減したという。
他にもメモや撮影した写真を部材ごとにひも付けて管理できる。クラウドストレージサービスとの連携では、所定フォルダ内の図面(PDF)のページを指定してひも付けることで、どこでも参照することができ、情報管理が効率的に行える。
大林組はプロミエを今後、施工管理BIMプラットフォームの核として、部材数が多い鉄骨工事を中心に工程管理などに活用していく。現在も機能追加・開発を継続しており、工事計画検討機能やフレキシブルな帳票出力機能を搭載することで、機能拡充や社内関連システムとの連携を進める予定としている。
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