BIMモデリングの確定度合い「LOD」をクラウド共有する管理システム、大林組らが今秋発売:BIM
大林組、トランスコスモス、応用技術は、BIMモデリングをしていく上で確定度合いを示す詳細度「LOD」を一元的に管理するシステムをRevitのアドオンとして2021年秋から販売する。システムでは、確定度合いをプロジェクトの部材ごとに入力し、クラウドを介して関係者間で共有するため、膨大な情報の中から確定した情報が一目で判別できるようになり、プロジェクトの進捗管理にもつながる。
大林組、トランスコスモス、応用技術は、BIMモデリングの詳細度(LOD:Level of Development)を管理するシステム「Smart BIM Connection」を開発した。
ゴールとなる達成要件=目標LODをフェーズと部位ごとに設定
Smart BIM Connectionは、2019年10月に締結した3社間のアライアンスに基づいて大林組が開発し、AutodeskのBIMソフト「Revit」のアドオンアプリケーションとクラウドサービスを合わせたパッケージ商品として、トランスコスモスと応用技術が共同展開する「toBIMサービス」を通じて、2021年5月からトライアル利用の受け付けを開始し、2021年9月1日から本格的に販売する。
BIMを設計から生産設計、施工管理まで一貫して利用するためには、建築に関わる関係者全員が一つのBIMモデルを作り上げていくこと(BIMモデリング)で、常に最新かつ正確な情報を共有し、効率的に活用していくことが肝要とされる。
一般的に、BIMモデリングは、建物の形状や仕様が不確定な状態から、顧客の要望を反映し、技術的な検討を経て、徐々に確定度合いを高めていく。この間の確定度合いを「200」や「300」といった6段階の数値で表す指標が、LOD※となる。
※ LOD(Level of Development):米国建築家協会がBIMモデルの進展度基準として2008年に制定し、実施するための参照文書として2013年に「LOD仕様書」を公開。LOD仕様書では6段階のレベル(100,200,300,350,400,500)とそのレベルで確定されているべき内容が部位ごとに定義されている(LOD仕様書では500の定義は省略)
【Smart BIM Connection関連記事】
■「作るBIM」から「使うBIM」へ、大林組の“LOD”を共有する管理システムの全容解説
Smart BIM Connectionは、BIMモデル上で部材ごとの確定度合いの入力と、仕様情報の自動チェックで、BIMモデリングとLOD管理を一元化するシステム。BIMモデリングを進めながら、プロジェクト途中でも関係者間でLODを共有することができる。BIMモデルが持つ膨大な情報の中から、既に確定した情報が判別できるため、BIMモデルの情報を次の段階へと円滑に利用できるようになる。
従来のLODは、BIMモデルとは別に、その確定度合いを「200」や「300」といった数値ごとに定義した“文書”を作成して管理していた。一方、新システムでは、プロジェクトのフェーズと部位(部材の集合単位)ごとにゴールとなる達成要件を定義し、目標LODとしてクラウド上に登録する。各フェーズはLOD仕様書で省かれている「500」を除き、「100」で企画、「200」で基本設計、「300」で詳細設計、「350」で施工、「400」で製作。
確定度合いの入力は、部材を選択すると、ステータス管理画面上に登録した目標LODとその達成要件が表示されるため、達成要件に対する確定度合いを「Good」や「NG」といったシンプルなボタン操作で選択すると、現在の進捗状況として、数値に変換される。進捗の数値ごとに部材をフィルタリングして着色すれば、視覚的に確定度合いを可視化することもできる。
目標LODの達成要件は、確定度合いの数値管理だけでなく、仕様情報が正しく入力されていることをシステムが自動でチェックすることで満たされる。BIMモデルに入力された仕様情報と、あらかじめクラウドに登録したチェック規則を突き合わせることで、仕様情報の誤りや作業漏れを発見。結果は、Revit上のダイアログで確認し、ダイアログから直に修正することにも応じる。
確定度合いと仕様情報のチェック結果は、プロジェクトごとにクラウドでレポートとして出力することが可能。また、クラウドサーバ上では進捗率に換算して、グラフなどの形で全体の進捗を閲覧することもできる。
今後、3社はSmart BIM ConnectionによるLOD管理の普及を通じて、BIMモデルを共有する効果を最大化させ、企業間を跨(また)いだ建設業でのBIM一貫利用の推進に貢献していくとしている。
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