鹿島がBIMとリンクするデジタルツイン基盤を構築、部材ごとの施工進捗率も把握可能:デジタルツイン
鹿島建設は、ピクシーダストテクノロジーズと共同で、着工前に作成するBIMと施工中の建設現場に設置したセンサー及びデバイスから取得する空間データを一元管理するクラウド上のデータベース「鹿島ミラードコンストラクション」を開発した。既に、鹿島ミラードコンストラクションを都内の現場に導入し、レーザースキャナーやToFセンサー、Webカメラによる空間データの継続取得を行っている。得られた空間データは、日々変化する建設現場を映し出すデジタルツインとして、施工管理、遠隔管理、自動搬送ロボットに活用していく。
鹿島建設は、落合陽一氏が代表を務めるピクシーダストテクノロジーズ(PXDT)と共同で、2018年に策定した「鹿島スマート生産」で活用するデジタルツイン基盤「鹿島ミラードコンストラクション(Kajima Mirrored Construction、以下KMC)」を構築したことを2021年1月21日に発表した。
蓄積した空間データには撮影時刻を付与
鹿島スマート生産では、DX戦略として「全てのプロセスをデジタルに」をコアコンセプトの1つに位置付け、BIMを基軸として建設生産プロセスのデジタル化を進めている。さらに、2018年以降は、建設現場でデジタルツインを実現するためのデータ基盤開発に着手し、PXDTが保有する先進的なセンシングや3次元データの処理技術と、鹿島建設が培ってきたBIM技術の統合を推進して、今回KMCの構築に至った。
KMCは、着工前に作成するBIMと施工中の建設現場に設置したセンサー及びデバイスから取得する空間データを一元管理するクラウド上のデータベースで、蓄積した一次データを組み合わせてさまざまな二次データを生成する。これらのデータを用いることで施工中の建物を可視化し、工事の進捗を多面的に把握することが可能。
例えば、BIMとレーザースキャナーで得られた点群データを重ね合わせて比較し、施工が完了した部位を色分けした画像「出来形ビュー」を作成し、集積する他、部材ごとの施工進捗率(数値データ)を算出して蓄積することにも応じている。
KMCで生成した出来形ビューは、独自に開発した専用の3次元ビュワーで見られ、カメラ画像はWebブラウザで確かめられる。現場に設置したカメラからKMCにアップロードされた映像データは、リアルタイムに配信されるだけでなく、画像解析技術により変化のあった箇所は色分け表示される。
また、蓄積した空間データには撮影時刻(タイムスタンプ)が付与されるため、日々変化する建設現場を映し出すデジタルツインとして、施工管理と遠隔管理を効率化する。
今後、鹿島建設は、KMCに蓄積したBIMや空間データを、これまで開発してきた安全、環境、品質、工程、コストに関わる現場ITツールや施工ロボットと連携することによって、現場運営のさらなる効率化を進める。
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