顔認証の入退場記録と“建設キャリアアップシステム”の就業履歴を「Buildee」で一元管理、鹿島が全現場へ導入:建設キャリアアップシステム
鹿島建設は、顔認証システムに登録する正確な就業履歴と、同社の全建築現場で供用中の施工管理システム「Buildee(ビルディー)」、さらに建設キャリアアップシステム(CCUS)とも連携させることで、次世代の担い手確保策の有効策として、技能労働者の処遇改善と現場運営のさらなる効率化につなげることを目指している。
鹿島建設はこれまでに、現場に入退場する技能労働者の就業履歴を正確かつスムーズに把握できる顔認証入退場管理システムの導入を進めてきた。2021年2月末時点で、全国の150現場へ導入を完了するとともに、システムへの技能労働者の登録者数が10万人を超えたと、このほど明らかにした。現在は、現場での新型コロナウイルス感染防止対策の観点で、入場時検温を行う熱赤外線カメラも追加して、全国の建設現場で導入を進めている。
「Buildee入退場管理/労務安全管理」と顔認証システム、CCUSを連携
技能労働者の処遇改善につながる各種の評価制度を活用して、全現場の技能労働者の動向を把握し、生産性を分析することで現場運営のさらなる効率化を進めるためには、各人の職務経験や就業実績の正確な把握が不可欠とされる。鹿島建設ではこれまで、技能労働者の入退場実績を紙ベースの情報で把握してきたというが、大規模な建設現場では多い日には数百人が入退場するため、入場者数の集計や事前申請の内容と実際の入場者との整合作業に大きな負荷がかかるなど、多くの課題が存在した。
そこで、正確かつスムーズな本人確認が容易に行える顔認証の入退場管理システムに着目し、現場での試行を進めてきた。各現場で単独運用するシステムでの有効性を確認した後、2020年2月からは集計データを全社横断的に利活用できるシステムを開発し、現在、全国の建設現場へ展開を進めている。
顔認証システムは現場の出入り口付近に装置を設置し、技能労働者の顔をカメラで撮影。あらかじめ登録しておいた顔写真と照合することで、正確かつ瞬時に個別認証する。最新型のシステムでは、カメラに内蔵したSIMカードによるLTE通信を用いるため、設置時に電源以外の配線工事を必要としない。
今般、新型コロナウイルスの感染防止対策として、新たに熱赤外線カメラを搭載し、顔認証と同時に検温も可能にした。検温に要する時間は、約1秒程度と短いので、作業者が立ち止まることなく出入り口での密集を防げる。顔認証も非接触方式で、ICカードのタッチ方式などと比べて感染リスクが低く、検温も無人で行えるメリットがあることから、今後は熱赤外線カメラ付きの新型システムを順次導入していく。
鹿島建設では、先立つこと、現場内の作業間調整を行う施工管理システムのBuildeeを全建築現場で採用。今般、システムに搭載された新機能「Buildee入退場管理」と顔認証システムを連携させることで、現場内での全技能労働者の入退場状況がリアルタイムに反映。さらに、新機能「Buildee労務安全管理」ともリンクさせれば、労務安全書類の作成や管理の省力化、施工体制の明確化など、現場運営の合理化も図れる。
また、鹿島建設が掲げる「鹿島スマート生産」では、「管理の半分は遠隔で」をコアコンセプトの一つとしており、Buildeeに集約された情報は、該当現場のみならず、本社・支店などの遠隔地からもリアルタイムで正確に把握。これにより、入場者数の集計手間が軽減されるとともに、現場ごとの生産性分析などに役立ち、現場運営のさらなる効率化がもたらされることが期待されている。
なお、BuildeeはCCUSとも連携しており、顔認証システムを利用することで、「建設キャリアアップカード」をカードリーダーにかざさなくとも、技能労働者の就業履歴がBuildeeとCCUSに自動で連動する。このため、技能労働者はカードを常時携行する必要が無くなり、入退場時のカードのかざし忘れなどによる各システムへの就業履歴の登録漏れを未然に防止。蓄積された就業履歴データをもとに、技能労働者はキャリアに応じた処遇が受けられ、雇用事業者の客観的な評価につながる。
鹿島建設では2019年4月時点で、建設キャリアアップカードのカードリーダーを全現場に設置するなど、CCUSの普及を支援しており、今回の顔認証入退場管理システム導入は、この取り組みをさらに推し進めるものと位置付けている。
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