最短1日でPCa部材の現場製造を可能にする超速硬コンクリート、竹中工務店が物流センターに適用:施工
竹中工務店は、フレッシュ性状の保持時間が短い超速硬コンクリート「ハイファード」の化学混和剤を改良し、建設現場でのPCa製造を可能にした「Site-ハイファード」を実用化した。Site-ハイファードは、工場の供給能力に影響を受けることなく、トラック輸送の制約も無くなるため、必要な時に自由な形状でPCa部材を現場で製造することが可能になる。
竹中工務店は2021年6月7日、コンクリート部材の製造時間を短縮するプレキャストコンクリート工場用の超速硬コンクリート「ハイファード」を改良し、建設現場内での製造を可能にした「Site-ハイファード」を開発したと発表した。既に埼玉県加須市で建設中の(仮称)加須物流センターで、車路の落下防止壁に初適用したという。
急速施工で1日2回転のPCa部材を製造、コスト低減や製造期間を削減
Site-ハイファードのベースになっているハイファードは、短時間でコンクリート強度を発現させるデンカ製の速硬性混和材「エフダックタイプT」を使用し、独自の蒸気養生システムで製造する2014年に竹中工務店が開発した超速硬コンクリート。
建設業では、建設技能者不足や働き方改革が喫緊の課題となっており、現場工程の短縮を可能にするPCaコンクリート部材の割合を高めることが、解決策の一つと目(もく)されている。そのため、竹中工務店では、プレコン工場でPCa部材を製造するための高品質で経済性に優れた超速硬コンクリート「ハイファード」を開発。ハイファードは通常のコンクリートと比べると、短時間で強度が発現し、通常1日1回転しか稼働できなかった同じ型枠での製造を1日2回転することが可能になり、生産効率が倍増する。
改良したSite-ハイファードは、ハイファードの特長となっている超速硬性を維持しつつ、竹本油脂やデンカと共同開発した新たな化学混和剤を組み合わせることで、速硬性を保ちながら流動性を確保。生コン工場から直接、建設現場にコンクリートを運びこみ、現場の敷地内でPCa部材を製造することが可能になるため、最短で当日中の取り付けが実現するだけでなく、自由なサイズの部材を作れる利点がある。
また、以前のように完成したPCa部材を工場から現場へ運搬する必要が無いため、輸送コストや長距離輸送で発生するCO2排出の削減にも貢献する。さらに、強度発現が早いので、現場内で部材をストックしておく期間も短くて済み、スペースに限りのある都市部や狭小地での工事にも対応する。
製造工程は、事前に生コン工場で超速硬混和材(エフダックタイプT)入りのコンクリートを練り混ぜておき、通常の生コンと同様に運搬。サイトPCaヤードでは、型枠に打ち込み、その後、3時間程度の蒸気養生を行うことで、吊(つ)り上げ強度が発現する。
竹中工務店が初適用した現場は、埼玉県加須市豊野台で2021年7月30日の竣工を目指して建設が進められている地上4階建ての「(仮称)加須物流センター」。適用箇所は、ランプ部腰壁(車路の落下防止壁)の368平方メートル。
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