プレキャスト床版の接合工法「サスティンジョイント」を実用化、品質や施工性を証明:新工法
三井住友建設は、自社開発した高性能コンクリート「サスティンクリート」を使用したプレキャスト(PCa)床版の新たな接合工法の施工試験を実施し、品質や施工性で問題が無いことが証明された。
三井住友建設は、自社開発したプレキャスト(PCa)床版の接合工法「サスティンジョイント」の実現場を想定して、千葉県流山市の同社R&Dセンターで施工試験を行い、施工法を確立したことを2021年3月に公表した。現在は、大規模インフラ更新事業で老朽化した高速道路橋などの床版取替え工事への適用に向けて、積極的に提案を進めている。
実現場を想定した製造から打込みまでの施工試験で施工法を確立
サスティンジョイントは、高速道路橋などの床版取替え工事での活用を目的に三井住友建設が開発。鋼繊維を混入した超高強度のサスティンクリート(超高強度繊維補強サスティンクリート)で、従来工法のループ鉄筋と補強鉄筋(直角方向)が不要となり、現場での配筋作業を省力化する。接合部幅も約4割狭められ、コンクリートの打設量の削減にもつながる。
接合部に用いる超高強度繊維補強サスティンクリートは、従来の超高強度コンクリートで発生する乾燥収縮や自己収縮が大幅に低減され、硬化時の発熱(水和熱)も小さく、ひび割れ発生リスクを抑える。構造的に弱点となり得る接合部に用いることで、高耐久も実現する。
また、構成材料の約4割に産業副産物を用いているため、製造時のCO2排出量を従来の超高強度コンクリートの6割程度に削減し、低炭素化による持続可能性にも貢献する。
三井住友建設ではこれまでに、床版試験体の曲げ試験や輪荷重疲労走行試験を実施し、疲労耐久性の確認を行っている。今回行った実物大のPCa床版による施工試験では、通常の生コン工場での製造と運搬が困難な超高強度繊維補強サスティンクリートの現地での製造から打込みまでの一連の作業を行い、品質や施工性に問題が無いことを確認した。
施工試験の具体的な内容は、セメントや骨材、混和材を所定の配合で事前計量し、フレコンバッグに梱包した原料を実現場を想定して設置した可搬型の簡易コンクリートプラントで製造。水結合材比が極めて小さく、鋼繊維を配合するため、製造に要する時間(材料の投入開始から排出まで)は一般的なコンクリートに比べて長時間となるが、安定した品質のコンクリートを製造できることが証明された。
施工性は、現地で製造した超高強度繊維補強サスティンクリートのPCa床版接合部への打込み作業で検証した。結果としては、サスティンクリートの特徴の1つ、高い流動性で、バイブレータなどによる締固め作業を行わずに打込みができた。また、試験後の切断による断面観察でも、高い充填(じゅうてん)性が保たれていることが分かった。
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