分割型PCa覆工システムが施工性向上、従来比で覆工体の構築期間を約7割短縮:新工法
清水建設は、シールド工事に用いるセグメントタイプのPCa部材で覆工体を構築する「分割型PCa覆工システム」の実用化を目指し、実証実験を進めている。2019年8月には、覆工体が形状を維持して自立することを確かめ、2020年7月には覆工体が十分な耐力を備えていることを実物大の覆工体を用いて明らかにした。このほど、システムの構築にエレクターと形状保持装置を採用した新システムの施工性を実証実験で検証した。
清水建設は、日本建設機械施工協会(JCMA)の施工技術総合研究所やIHI建材工業と共同で、PCa部材を用いて覆工体を作る「分割型PCa覆工システム」の構築にPCa部材を設置するエレクターと、PCa部材を仮受けして位置調整する形状保持装置を採用した新システムを開発し、施工性を実証実験で検証した。
60分で覆工体の1リングを作成
分割型PCa覆工システムは、馬蹄形の覆工体をシールド工事で実績のあるセグメントを模したPCa部材で構築する工法で、覆工体の1リングはRC製PCa部材6ピースから成る。
分割型PCa覆工システムの作成にエレクターと形状保持装置を活用した新システムは、清水建設が発案し、IHI建材工業が設計と製造を担い、JCMAの施工技術総合研究所は設計指導した。エレクターと形状保持装置は、いずれも新たに開発した施工機械で、レール上を走行できるようにした。
新システムの組み立て手順は、まず、エレクターでPCa部材を1ピースずつキャッチし、所定の位置に配置する。その後、作業員がシールド工事に用いるセグメント用継手(つぎて)で、部材同士を順次連結していく。
次に、形状保持装置で連結された部材を1ピースずつ仮受けし、設計通りに馬蹄形を描くように位置調整する。形状保持装置を外しても部材が自重でたわまないように、ボルトを使って部材背面と地山の隙間を保ち、組み立て完了。
今回の実証実験では、静岡県富士市に存在するJCMAの施工技術総合研究所にある実験ヤード内の実寸大模擬トンネルを使用し、狭い環境下で新システムの施工性を確かめた。
具体的には、2車線を想定した模擬トンネルを掘削後の地山に見立て、内側に覆工体を9リング構築した。模擬トンネルのサイズは11.2(幅)×7.1(高さ)×80(奥行き)メートルで、内空断面が66平方メートル。PCa部材1ピースの大きさは、幅1.0×弧長2.8メートルで、厚さは140ミリ、重さは1.1トン。
実証実験の結果、平均で1ピースあたり約10分で所定の位置に配置でき、計60分で覆工体のリングを1つ作れることが判明した。さらに、エレクターと形状保持装置を利用することで、PCa部材の組み立てと接合をシステマチックに行えることや1ピースの運搬、搬入、設置が容易になり、生産性が向上することが分かった。
清水建設は、実証実験の結果を踏まえ、新システムを今回の模擬トンネルと規模が同じトンネルの新設やリニューアル工事に適用した場合、これまで行っていた方法と比較して覆工体の構築期間を約7割短縮することを予測している。
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