高さ150メートルの風力発電所を建設可能な移動型タワークレーンを開発、清水建設:産業動向
清水建設は、高さが150メートルで、5メガワット級の風力発電所を建設できる移動型タワークレーン「S-Movable Towercrane」の設計・製作に着手した。S-Movable Towercraneへの投資金額は約11億円で、2023年6月の完成を予定している。
清水建設は、100%子会社のエスシー・マシーナリとIHI運搬機械と共同で、5兆円の市場規模が見込まれる陸上風力発電施設建設工事の受注に向け、大型施設の建設に対応する移動型タワークレーン「Sエス-・Movable Towercrane(エス・ムーバブルタワークレーン)」の設計・製作に着手したことを2021年5月7日に発表した。
最大作業高さは152メートルで最大揚重能力は145トン
国内では、政府の「2050年脱炭素宣言」を受け、再生可能エネルギーである風力発電所への期待が高くなっており、洋上と陸上ともに風力発電所の建設計画が増えている。移動式クレーンを用いる陸上風力発電所は、建設地が非常に限られているが、旺盛な新設需要があり、かつFIT導入時期に建てられた施設の耐用年数経過に伴うリプレース需要も発生している。このため、発電効率の高い大型の風力発電所が求められている。
また、これまでの移動式クレーンでは、高さが100メートルで、約4メガワット(MW)程度の風力発電所を建設するのが限界だった。これ以上の施設を建設するためには、特殊な大型クレーンが必要となるが、非効率的で実用的ではなかった。
そこで清水建設は、高さが150メートルで、5MW級の大型風力発電所を建設できるS-Movable Towercraneの設計・製作に着手した。
S-Movable Towercraneの最大作業高さは152メートルで、最大揚重能力は145トン、最大作業半径は12.5メートル。移動型の利点は、陸上風力発電施設の施工で不可欠となるクレーンの移設を柔軟に行えること。さらに、マストの1部と基礎部を解体するだけで、タイヤ式の自走式搬送車両「ドーリー」で次の建設ヤードに移せ、工期を短縮する。加えて、発電事業者は工期と費用の面でメリットがある。
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