粉じん濃度の測定と計測結果の周知を効率化するシステムを開発、東急建設ら:山岳トンネル工事
東急建設らは、粉じん濃度の測定と計測結果の周知を効率化するツール「トンネル粉じん測定システム」を開発した。同社は、中日本高速道路発注のトンネル工事「新東名高速道路湯触トンネル他1トンネル工事」で新システムの実証実験を行った結果、有効性を確認した。今後、東急建設は他のトンネル工事へ導入を進める。
東急建設は、マックや東宏と共同で、山岳トンネル工事の安全管理に不可欠な粉じん濃度の測定と計測結果の周知を効率化するツール「トンネル粉じん測定システム」を開発したことを2021年3月26日に発表した。
遠隔地でもリアルタイムに粉じん濃度を確認可能
山岳トンネル工事での粉じんは、じん肺※1の原因となるため、これまでにさまざまな対策が施されてきた。また、近年のトンネル工事では新たな工法の普及や機械の大型化などで、粉じん発生が多様化し、作業環境を良好に維持する観点から、政府は「ずい道など建設工事における粉じん対策に対するガイドライン」を改正し、2021年4月1日に施行した。
※1 じん肺:鉱物性粉じんを長期間にわたって吸い込み続けると、肺内に粉じんが沈着して起こる病気
上記のような状況を踏まえて、東急建設やマック、東宏はトンネル粉じん測定システムを開発した。トンネル粉じん測定システムは、改正ガイドラインの「切羽(きりは)に近接する場所の粉じん濃度などの測定」と「粉じん濃度などの測定結果などの周知の充実」の2項目に対応するシステムとして、長時間の粉じん濃度測定と膨大な量のデータ整理、坑内周知を自動化している。
新システムでは、粉じん濃度計とバッテリー、無線装置を収めた専用粉じん測定BOXを6カ所に設置し、計測した粉じん濃度のデータが坑内に設置した管理用PCに伝送され、ガイドラインの基準に照らした濃度評価と呼吸用保護具に対する要求防護係数の算出、記録帳票の作成を自動で行う。
粉じん濃度のデータは、管理用PCだけではなく、坑内や事務所、支店などの遠隔地でもリアルタイムに確認できるため、測定と周知の両方で業務の効率化を実現する。さらに、東急建設が既に開発し、現場で実装している「切羽監視責任者支援システム」※2や「入坑管理システム」※3などの既存システムと連携することで、安全管理に特化した支援システムとして作業の簡素化や周知の作業性向上を図れる。
※2 切羽監視責任者支援システム:改正ガイドラインに則した切羽の監視項目をタッチパネルPC端末で定型フォーマットに記録し、切羽地質状況の静止画像データと特筆すべき地質や湧水の状況についてコメントをプルダウンボックスで容易に選択入力することができるシステム
※3 入坑管理システム:タッチパネル式PCを坑口部に設置して入退者の管理を行い、ネットワークを介すことで遠隔地でも確認・管理ができるシステム
具体的には、トンネル粉じん測定システムと切羽監視責任者支援システムは連携することで、掘削や吹付けといった各作業サイクルタイムのデータを共有・同期し、データ入力の2度手間を避けられ、坑内の大型タッチパネルPCに粉じん濃度の計測結果と管理方法も表示可能だ。入坑管理システムとトンネル粉じん測定システムは連動することで、現場で使用する坑口部のタッチパネルPCでも粉じん濃度の測定結果を労働者へ知らせられるようになる。
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