「作るBIM」から「使うBIM」へ、大林組の“LOD”を共有する管理システムの全容解説:Autodesk University 2020(3/5 ページ)
多岐にわたる膨大な情報を内包しているBIMモデル。必要に応じて適切な情報を選び出すことが、BIMモデルを活用するための大前提となる。だが、実際には「どの情報が信じられるか?」を見ただけで判別するのは難しい。しかも、この問題を解決するカギと目される詳細度「LOD」もモデルとの間に大きな断絶がある。そこでLODに基づきながら、BIMモデルを介したコミュニケーション環境を構築しようという新たな取り組みが始まっている。「Autodesk University 2020」で、大林組でデジタル推進室iPDセンターに所属し、全社的なモデリングルール整備などBIM運用の管理業務を行う谷口隆二氏と、応用技術でBIM事業の立ち上げを主導し、親会社のトランスコスモスと共同のシステム開発も含めたBIMトータルサービス「to BIM」をローンチする高木英一氏の発表から、LODを一元的に関係者間で共有する管理システムの全容を紹介する。
運用可能なLOD要件を新たに定義
「次に、LODを運用可能な形にするLOD要件の定義方法について紹介します。LOD原典のLOD仕様書には、LODの6レベルで5つの要件が定義されています」。LODレベル200では「あらゆる情報は近似値として見る必要がある」、次の300では「文字情報抜きにモデルから直接計測できること」と定義されている。つまり、形状としてのデータはそこそこで良いレベル200と、形状が全て正しくあるべきのレベル300という設定だが、現実には両者の差が大き過ぎるため、現行のフェーズ管理には合致しない。
そこで、独自レベルを追加したのが谷口氏らの工夫である。レベル200と300の間に“平面情報とプロパティが正確”というレベル250を設けるなど、現行業務と照合しながら達成可能な目標レベルを細かく設定していったのだ。
「原典であるLOD仕様書には、部位ごとの要件が具体的に例示されています。例えば木造間仕切壁は、レベル200でオブジェクト分類が求められ、300では下地計画可能なモデルが求められます」。
しかし、LOD仕様書はRevitユーザーだけが対象ではなく、記された要件は基本的にRevitの仕様と合致しない。Revitユーザーがそのまま進めると、モデル毎に出来高が異なる可能性もあるため、まずLOD要件をRevit操作に変換する必要があった。例に挙げた木造間仕切壁の要件で考えると、インスタンスの位置やタイプ選択の妥当性、プロパティに分解できるので、これに基づき、LOD仕様書の表現をRevit操作に沿った形にすることで実運用可能なLOD要件となる。
「こうして運用可能な形に定義し直したLOD要件があれば、フェーズ毎に目標LODを定められ、この目標に対しモデリングする上でなすべきことも明らかになります。モデリング指示者は悩むことなく指示の手間も抑えられ、モデル入力者もなすべきことが明確化して作業に迷いがなくなるでしょう。LOD要件は、モデルが含む膨大な情報からチェックすべき事項を限定するので、不要な手作業も生じません。最終的にはフェーズ毎のモデル精度が向上し、信頼できる情報を選択できるようになる──という最大のメリットがもたらされるわけです」。
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